桃色吐息
そんな時期に、百合から「邸に顔を出すように」と連絡が来たので紅家へ久しぶりに帰った。
「[#da=2#]、結婚おめでとう」
百合にギュッと抱きつかれる。
「[#da=2#]が窒息する、離れろ」
後ろから黎深が冷たい声で言い放つ。
「いいじゃないか、かわいい娘みたいなものなんだから」
百合は屈託なく笑って、こっちへきて、と手を引いて一つの部屋に入った。
眩いばかりの絢爛豪華な衣装や飾りで埋め尽くされた部屋。
「これは、いったい?」
「あなたの嫁入り道具よ。紅家から出すのだからそれなりに用意しないとね」
「いや、でも・・・」
(そこまでしていただく立場じゃないし)
「お前は紅家の姫だからな、当たり前だ」
「もう君は!言い方!私たちがあなたのためにしたいのよ。もちろん、邵可様や玖琅もね。自分たちじゃわからないからと私に任されたのよ。ある程度見立てておいたから、好きなものを選びなさい」
それから、この中からならどれが気に入ったか、をひたすら聞かれて
服飾の山を選別していく。
「黎深ったら、絳攸の小さい時もそうだったけど注文が多くてね。でも、男女の差はあれ、少し選んでいる色味が違うのよ。きっと、黄家でのあなたを想像して・・・いたっ」
パシッと扇で百合の頭を叩いて
「うるさい」
と一言呟いた。
確かに、紅色一辺倒ではない。
全てではないが紅系統と黄色系統のものがバランスよく並べられている。
百合が小さい声で「照れ隠し」と教えてくれたので黎深の顔を見たらほんの少し耳が赤くなっていて、思わずクスリと笑ってしまった。
「よかった、笑ってくれて。ずっと硬い顔してた、って聞いてたんだもの」
百合はニコニコ笑う。