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紅の企み

先ほど去った冷血長官が走りながら戻ってきたので周囲は慄いたが
向かった先は彼の居場所の吏部ではなく・・・


バーン!!

「鳳珠っっっ!!!」



「紅吏部尚書、こんにちは」
先に答えたのは呼ばれた者の副官。
「今日はまた血相変えてどうされたのですか?
 鳳珠、青筋立ててないでなんとか言ったらどうですか?お友達がいらしたのですから」


「柚梨、お前は1つ間違っている。此奴は友達ではない」

青筋を立てた戸部尚書・・
仮面長官と言われる黄鳳珠である。
もちろん、仮面をかぶっているので青筋は見えない

「今から私についてこい」
「扉を開ける前に声をかけるべきであろう、さらに、貴様と違い私は仕事をしているんだ、この山をみろ、部下に押し付けてフラフラしているお前について行く暇はない。とっとと帰れ」

言うだけ言って、書面に筆を走らせ始める。
大体、そんな一言で諦める黎深ではない。

「良いから私についてこい」
抱えている荷物を持ち直した姿をみて、柚梨が言った。
「今日はもう大概片付いていますし、あとは私でもできますよ。
 紅尚書は何やらお持ちですが、それは・・・」

「これか?あぁ、景侍郎が此奴の仕事を引き受けてくれるのなら一つやろう」
と言って、新作の菓子を一つ渡した。


!!!!!!


条件反射でうけとった柚梨も、それを見ていた鳳珠も何事かと驚く
紅黎深、兄以外に人になにかをあげることは、鳳珠の仮面(単なる嫌がらせとも言う)以外ないということをこの二人はよく知っているからである。

「あ、ありがとう・・・ございます。」
あまりの驚きにようやく一言礼をいう柚梨。
「鳳珠、今日は本当に大丈夫ですから、行ってきてください」
これで行かせないと後でなにが起こるやら・・・それを心配する柚梨。

「お前、なにを考えているのだという顔をしているな、ついてくればわかる」
「・・・わかった。柚梨、あとを頼む」

重い腰を上げて鳳珠は黎深について出て行った。



氷の長官・吏部尚書と仮面長官・戸部尚書が連れ立って歩く様は
周囲の者を恐怖にしか陥れない。
何かある、とわかっていても、後をつけるような猛者は一人もいないのだった。
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