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桃色吐息


「と、いうことがあったんです」

次の戸部手伝いで遅い時間に二人きりになって、仮面を外して恋人らしい会話が始まった時に、手短に[#da=2#]は珠翠とのことを報告した。
色気が出てきたと噂、とかは省いて。

「結局、珠翠には鳳珠様の話はしなかったんですけど・・・」
「別に構わないだろう、出会った時に一緒だったのだから。私は邵可殿には[#da=2#]に気持ちを伝えた夜のうちに許可をいただきに行ったし、おそらく[#da=2#]と珠翠殿がお茶をしていたときに黎深が邸に来たから伝えたが。」

(えっ、そんなにすぐに邵可様に?)と思ったが、真剣に考えてくださっていることに胸がいっぱいになってくる。
「ありがとうございます。それより、鳳珠様から頂いたお菓子と全く同じだったので不思議に思っていたんですけれど、どういうことなのでしょう?」

・・・

鳳珠は黙ってしまった。
えっと、何か不味い発言をしたかしら?と[#da=2#]は話した内容をもう一度遡る。
大丈夫、珠翠が言っていた自分の人気が上がってるとか意味不明なこと言ってないし、藍将軍のことをボウフラ発言もしていない。
そっと鳳珠の顔を見ると、心なしか赤くなっているようだ。
不思議に思って見つめていると、目があった。

「おいで」
呼ばれたので素直に向かうと、ひょいと膝の上に乗せられて抱きしめられた。
いつも抱きしめられた時は身長差から黄色い衣しか目に入らないが、
今は鳳珠の顔が肩のあたりに埋められている。


いつもは麗しい声だがそのままの体制でモゴモゴと言いにくそうに話し始めた。
「あれは、[#da=2#]の好きなお菓子を作らせたのだ。
 喜んでもらいたかったからね・・・」

思いも寄らない告白に息が止まりそうになった。
お付き合いを始めてからこの数日、外朝でも二人だけになった時にたいそう甘やかされているという自覚はあったが、あの時点でそこまで考えていてくださったとは。

「[#da=2#]が気に入ったようだったし、これなら合格だろうと店を出させた。あの味なら潰れる心配はない。黄家は商売に関しては厳しいけど戦略は確かだからね。」
それに・・・と続ける。
「[#da=2#]と二人で過ごした最初の思い出だからな、潰すわけないさ」

とびきり甘い声で囁かれて思わずギュッと抱きつくと
鳳珠は顔を上げて口づけを落とした。
お菓子よりも甘い甘いひとときに、幸せなため息をついた。
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