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桃色吐息



黎深が鳳珠邸に絡みに行ったのと同じ頃、場所は後宮。


「たまには二人でお茶しない?私の部屋で待ってるわ」
珠翠に誘われて[#da=2#]は向かう。

珠翠が遠出(邵可のお仕事)をしない時以外は時々二人でそんな時間を持っていたが、この2ヶ月は桃華が外朝での仕事からの帰りが遅いのと(もちろん秘密の手伝い)公休日は鳳珠と過ごしていることがほとんどのため、随分久しぶりの夜のお茶会だった。

(珠翠と二人で話すの、いつぶりだったかしら?鳳珠様のことを伝えてもいいかしら…?)
伝えてもいいか鳳珠に聞きそびれていたので迷う。
もっとも、言ったところで怒りはしないだろうが。


「珠翠、お招きありがとう」

珠翠は[#da=2#]の姿を上から下までじっと見る。
今日は後宮女官姿だが、いつからか頭の飾りに髪紐が増えた。
たかが髪紐だけれど、見るからにそれは上質のもので玉石までついている。
最近、そこはかとない色気が出てきたように感じ
妹のように思っている[#da=2#]の変化は確実に感じ取っていた。
(何かあったなら、話してくれてもいいのに)
と少し寂しく思いながら迎える。

「最近、下町の楼閣の近くにできたお店で評判のお菓子が手に入ったのよ」
と言って、珠翠が出したのは、
初めて鳳珠が[#da=2#]に出したお菓子と同じものだった。

「これ・・・」
「あら、食べたことある?先週ぐらいにできた新しいお店のなんだけど、たくさん販売しないらしくて、これはかなり並ばないと買えないと評判なんですって。ボウフラが持ってきてくれたんだけどね、お花と違って意味もないし、お菓子に罪はないから受け取ったのよ」
一応将軍なのだが、藍楸瑛に関しては相変わらず珠翠はボウフラ呼ばわりである。


「え、先週?」
「そうよ、知らない?」

鳳珠がこれを出してくれたのはもう2ヶ月ほど前だ。
何かおかしい・・・と思いつつ一口食べてみる。

「同じ味・・・」
「え?」
「あ、ううん、なんでもない。このお店って貴陽以外にもあるのかしら?」
「さぁ?多分ないと思うわよ。どこかの州の有名なお店が出店したという噂は聞いてないし、何も言っていなかったわ。大体、何かくれる時は細かいうんちくとセットだもの」

藍将軍は涙ぐましい努力をしているけれど珠翠には受け入れられない、ということだけは伝わり、(がんばれ藍将軍)と心の中で応援をしておいた。

だが、どういうことなのか。
やはり貴陽に新しくできた店、と考える方が自然だろう。
(でも、これはあの時のお菓子と同じ・・・今度お会いした時に確認しなくては)
[#da=2#]は「おいしいわ」と言ってにっこり微笑んだ。


「[#da=2#]が気に入ったならよかったわ。好きそうだと思ったから取っておいたのよ。最近、ゆっくり話せてなかったし、いい機会だと思って」
珠翠はにっこりと微笑む。
華やかで美しい女性で、桃華にとっては憧れの姉のような存在である。

時々いなくなるので、何か裏の仕事がある、ということはわかっているが聞いてもいないし聞くつもりもない。
[#da=2#]にとっては自分といる時に珠翠が穏やかな気持ちでいられれば
それが一番いい関係でいられるとわかっているからだ。

「最近、少し雰囲気が柔らかくなったわよね」
突然、話の矛先が自分に向かってきて驚く。
後宮こっちにいるときはいつもそんな装いだけど柔らかい女性らしさが加わったというか・・・外朝姿に色気が出てきたと評判でさらに人気が出てきたようよ。あ、これもボウフラ情報ね。」

今日は藍将軍の話がよく出てくる。
大方、お菓子を渡したときに、珠翠の興味をひきそうな話、ということで
ペラペラと話したのだろう。

(そろそろ話が核心に近づいてきたけれどどうしよう・・・)
なんとなく落ち着かなくてソワソワし始める。
愛だの恋だのといったところとは遠いところで生きてきたのでただでさえなんだかくすぐったいし、それが自分のこととなれば恥ずかしさが勝ってしまう。

「その髪紐に変えてからかしらね、普段の[#da=2#]に近い感じがしてとてもいいと思うわ」
珠翠は知っているのだろうか?
なんだかドギマギしながら
「ありがとう」
とは答えたが、幸いにもその後、特にその話題については発展せず
いつもの通りいろいろな話をしてお開きとなった。
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