黄色の想い
3日待った。
この私が、3日待ったにも関わらず、
あいつは何も言ってこない。
怒りと苛立ちの矛先を当人に向けるには山より高いプライドが許さず向かった先は・・・
「兄上っ!」
府庫である。
「ヤァ黎深、そんなにイライラしてどうしたんだい?」
相変わらずの邵可の反応。
弟の考えることは大体わかる邵可にとって、原因は聞かなくても良かったが、黎深を宥めないととんでもないことになると思って(すでにとんでもないことにはなっているが)素知らぬ振りで迎え入れる。
「兄上・・・これが冷静でいられるでしょうか・・・
あの!仮面が!![#da=2#]に手を出しました!!!」
「黎深、友達を仮面呼ばわりしないの。」
大の大人に向かい、5歳児に向けるような注意をする。
「黄尚書が戯れで手を出すことはないと思うけどね?というか、手は出してないと思うよ?」
まだそうではないと知りつつ、念のために確認する。
「黄尚書から報告があったのかな?」
ばんっ!!と机を叩いて立ち上がるや否や
「あのバカは、私に何の報告もないのです!私に!!誰が許すものか!大事な紅家の姫を・・・(ぶつぶつ)」
邵可はいつものちょっと困り顔で「お茶でも飲んで一息ついて」と差し出しすと、蕩けそうな顔で黎深は大事そうに一口飲んだ。
紅家だけが生きる世界だった人と232度も視点が違う天つ才の黎深にとって家族(自分と弟)以外で初めて正面から受け止めてくれた鳳珠殿と悠舜殿だ。
まぁ鳳珠殿にしても、あの美貌を何も感じず初めて正面から受け止めのは
黎深と悠舜殿だろうが。
だから、会えば文句ばかり言っているが、大切な者への猪突猛進で全力の愛情を同じだけのものとして返してもらえていないことに寂しさを感じているのだろう。
黎深は怒っているが、悲しいのだ。
(相変わらず、不器用なことで)
ひっそりと苦笑いする。
ただ、[#da=2#]のことをそこまで大事に思っているとは正直邵可も意外だった。
(もう少し素直に表せられればいいのにね)
「さっきも言ったけど、黄尚書が戯れで手を出すとは思えないしまだそこまで進んではいないんじゃないかな。私のところに報告に来られたのも3日ほど前だし」
邵可としては話す予定がなかったが、これを言わないと黎深の行動がさらにエスカレートするとふんで、仕方なくいうことにした。
「[#da=2#]の後見は私だからね、きちんとお話をしてくださったよ」
「!!!あのやろぅ・・・」
「そんな顔しないの黎深、鳳珠殿はきちんと考えてくれているよ。[#da=2#]の後見は私、君は鳳珠殿の親友だ。きちんとした報告の順番としては間違っていないと思うけどね。」
「でも・・・っ」
「ここから先は推測だが、鳳珠殿も君に言う時期を見計らっているんじゃないかな。そもそも、この話は君が鳳珠殿にけしかけたんだ。思い通りになって良かったじゃないか」
そうなのだ、元は黎深の企みなのだ。
だがそれを素直に認めることはない男・超絶捻くれ者の紅黎深。
ウキウキと鳳珠が報告してくれるのを待っていたが、何も言ってこないことが怒りになって兄に愚痴りにきたのだ。
「君は、[#da=2#]にも、鳳珠殿にも幸せになってもらいたいだろう?それであれば、決して彼らを責めてはいけないよ。もし二人の仲を裂くようなことをしたら、私が許さないからね」
邵可が真顔でダメ押しをする。
いずれにせよ、邵可に黎深は弱い。
この顔はいざというときに彼が手を汚すことを表しているからだ。
二度と何もしてほしくない、という黎深の願いと相反する。
そして今回の場合、その矛先は自分だ。
愛する兄の手にかかるのは怖くないが、こんなことで嫌われて殺られるのはごめんだ。
「わかり・・ました・・・」
黎深は渋々頷くしかないのだ。