紅の企み
府庫をでた時には、もう宵の口だった。
戻れば仕事は山ほどあるのはわかっていたが、何となく毒気を抜かれて戻る気にもならないな・・・と思いながら歩く。
仕事をしない黎深はおそらくそのまま帰るだろう、どうするか、と思う鳳珠は結局性分で黎深と別れて戸部に立ち寄ったが、あの仕事の山を上手く捌いたのか柚梨も帰った後だったので、そのまま邸へ帰ることにした。
「お館様、おかえりなさいませ。その・・・」
家令が何やら言いにくそうに言葉を切る。
「どうした?」
「お約束ではないようですが、お客様がお待ちです。」
この含みを持たせた言い方に、嫌な予感しかしない。
そもそも、我が家に事前に案内もなしに来るやつは一人しかいない。
使用人を丸め込んで入るのはいつものやり方だ。
部屋に入ると、酒を片手に寛ぐ男。
「ここは貴様の邸ではない、すぐ帰れ」
今日何度目かわからない怒気を含んだ声で一言伝える。
「いいではないか、今日という有意義な1日を締め括るために、君の麗しい顔を見ながら酒でも一緒に飲んでやろうとこの邸に来てやったんだ」
言い分が明らかにおかしい。頼んだ覚えもない。
突っ込んだところで疲れるだけなので無視した。
「というか、酒まで出させるな」
「さすが黄家、いい酒が出てくるな」
紅家の力で手に入らないものはないだろう。
「貴様がいうと嫌味にしかならん。それで、何の用だ。用がないならさっさと帰れ」
用があっても帰ってもらいたい。
ほんの少し混乱している気持ちを一人で整理したい気分なのに、
黎深は全く動く素振りを見せない。
「今日の話どう思った?あの二人は君の顔を見ても
動揺したのは一瞬だったな」
大方この件だろうと思っていたが、いきなり豪速球の直球でぶつけてきた。
まぁ鳳樹に対しての黎深は取り繕うことはしない。
「王のそばにいるのだ、多少のことでは動揺しない訓練はされているだろう」
答えになっているようでなっていない回答をする。
はぐらかしたところで、黎深には通用しないとわかっていても、
まだ気持ちの整理がついていない中で答える気にならなかったのだ。
「君にしては的外れだな。桃華の一言が刺さったか?社交辞令でもそう言ってくれる人がいてよかったな、私はそれが嬉しいのだ。拗らせていた君にも春が来るかもしれないな。まぁ、飲め。美味いぞ」
相手を慮るという気持ちなど欠片も持ちわせていない男、ド直球である。
それはうちの酒だ、と答える気力も失せ、仮面を外しながら「さぁ・・・どうかな」とはぐらかしながら注がれた酒を飲む。
「今日の茶会といい、今お前がきたのといい、
いったい何なんだ」
イライラしながら問う。
「お前のところにはまだ情報が入っていないか?
少し後宮がきな臭い、妃がいないのにも関わらず」
「その件か・・・金回りのことしか入ってこないがな。
要求方法と要求金額がおかしいので調べているところだ。
今日はそれをやる予定だったが、貴様が呼び出したので柚梨に下処理だけ押し付けた形になった。柚梨には貴様のせいで申し訳ないことをしたな」
あまり本心からではないが、嫌味の一つもいいたくなって付け足したが
黎深にそれが通用するはずもない。
「それで、あの二人だ。内と外を繋ぐにはもってこいだろう。
これから接点が増える可能性があるなら、君には”よく”知っておいてもらったほうがいいと思ってな」
今日の黎深は読めない。
ただ、その件はちょうどいい理由にすぎす、全く本心ではないことを言っている。
ただ、[#da=2#]の一言でそれが不快なものにならなかったから鳳樹にとってはよかった、という結果論だ。
これがそうでなかったら気功で2、3発はぶっ放していただろう。
そして、”内と外を繋ぐ”役割といえば日頃から外朝周りで出入りしている[#da=2#]だろう。
黎深が自分を引っ張って行った時点でどこまで計算したかは不明だが自分を連れて行った理由は[#da=2#]なのははっきりした。
戻れば仕事は山ほどあるのはわかっていたが、何となく毒気を抜かれて戻る気にもならないな・・・と思いながら歩く。
仕事をしない黎深はおそらくそのまま帰るだろう、どうするか、と思う鳳珠は結局性分で黎深と別れて戸部に立ち寄ったが、あの仕事の山を上手く捌いたのか柚梨も帰った後だったので、そのまま邸へ帰ることにした。
「お館様、おかえりなさいませ。その・・・」
家令が何やら言いにくそうに言葉を切る。
「どうした?」
「お約束ではないようですが、お客様がお待ちです。」
この含みを持たせた言い方に、嫌な予感しかしない。
そもそも、我が家に事前に案内もなしに来るやつは一人しかいない。
使用人を丸め込んで入るのはいつものやり方だ。
部屋に入ると、酒を片手に寛ぐ男。
「ここは貴様の邸ではない、すぐ帰れ」
今日何度目かわからない怒気を含んだ声で一言伝える。
「いいではないか、今日という有意義な1日を締め括るために、君の麗しい顔を見ながら酒でも一緒に飲んでやろうとこの邸に来てやったんだ」
言い分が明らかにおかしい。頼んだ覚えもない。
突っ込んだところで疲れるだけなので無視した。
「というか、酒まで出させるな」
「さすが黄家、いい酒が出てくるな」
紅家の力で手に入らないものはないだろう。
「貴様がいうと嫌味にしかならん。それで、何の用だ。用がないならさっさと帰れ」
用があっても帰ってもらいたい。
ほんの少し混乱している気持ちを一人で整理したい気分なのに、
黎深は全く動く素振りを見せない。
「今日の話どう思った?あの二人は君の顔を見ても
動揺したのは一瞬だったな」
大方この件だろうと思っていたが、いきなり豪速球の直球でぶつけてきた。
まぁ鳳樹に対しての黎深は取り繕うことはしない。
「王のそばにいるのだ、多少のことでは動揺しない訓練はされているだろう」
答えになっているようでなっていない回答をする。
はぐらかしたところで、黎深には通用しないとわかっていても、
まだ気持ちの整理がついていない中で答える気にならなかったのだ。
「君にしては的外れだな。桃華の一言が刺さったか?社交辞令でもそう言ってくれる人がいてよかったな、私はそれが嬉しいのだ。拗らせていた君にも春が来るかもしれないな。まぁ、飲め。美味いぞ」
相手を慮るという気持ちなど欠片も持ちわせていない男、ド直球である。
それはうちの酒だ、と答える気力も失せ、仮面を外しながら「さぁ・・・どうかな」とはぐらかしながら注がれた酒を飲む。
「今日の茶会といい、今お前がきたのといい、
いったい何なんだ」
イライラしながら問う。
「お前のところにはまだ情報が入っていないか?
少し後宮がきな臭い、妃がいないのにも関わらず」
「その件か・・・金回りのことしか入ってこないがな。
要求方法と要求金額がおかしいので調べているところだ。
今日はそれをやる予定だったが、貴様が呼び出したので柚梨に下処理だけ押し付けた形になった。柚梨には貴様のせいで申し訳ないことをしたな」
あまり本心からではないが、嫌味の一つもいいたくなって付け足したが
黎深にそれが通用するはずもない。
「それで、あの二人だ。内と外を繋ぐにはもってこいだろう。
これから接点が増える可能性があるなら、君には”よく”知っておいてもらったほうがいいと思ってな」
今日の黎深は読めない。
ただ、その件はちょうどいい理由にすぎす、全く本心ではないことを言っている。
ただ、[#da=2#]の一言でそれが不快なものにならなかったから鳳樹にとってはよかった、という結果論だ。
これがそうでなかったら気功で2、3発はぶっ放していただろう。
そして、”内と外を繋ぐ”役割といえば日頃から外朝周りで出入りしている[#da=2#]だろう。
黎深が自分を引っ張って行った時点でどこまで計算したかは不明だが自分を連れて行った理由は[#da=2#]なのははっきりした。