紅の企み
「美味しい菓子が欲しければ吏部に寄れ。[#da=2#]が来てくれるならお茶を淹れよう。あと、黄家のルートで美味しいものも手に入るから戸部に寄ってもいいかもしれないね」
黎深は鳳珠に無茶振りをして、不思議なお茶会は幕を閉じた。
珠翠と[#da=2#]は後宮に戻っていく。
「・・・で、お茶とお菓子を持ってきてくれたのはわかるけど
黄尚書まで伴って、いったい何の用だったんだい?」
二人が退室してから邵可は黎深に聞いた。
「悠舜から新茶が届いたのと、新作の菓子が手に入ったので
兄上と鳳珠と楽しみたかっただけですよ」
(絶対、嘘だ。邵可殿と自分との間に邪魔者はありえないはずだ)
腐れ縁の長い付き合いで良くも悪くも互いのことはよくわかっている。
邵可に絡むときに自分が連れ出されるのは、秀麗に名乗りを上げていないがばかりに、普通に入れてもらえない邵可邸にいく時が主だ。
ここにきてから仮面を外されるという最大の嫌がらせを受けているにも関わらず、しれっと綺麗事を答える黎深に色々言いたいことはあったが(邵可殿の手前、それもできない。黎深はそこまで見越した上の行動か?)と思い、グッと我慢をする。
「黄尚書、黎深のわがままに付き合ってくれてありがとう。嫌な思いもしたとおもうけれど・・・私に免じて許してくれるだろうか。あの二人なら先の反応の通り、大丈夫だ」
という邵可のダメ押しに何も言えなくなる。
「それと黎深、仮面はお返ししなさい」
兄の一言で、思い出したかのように素直に黎深は仮面を渡す。
「邵可殿がそこまで仰るなら」
とだけ答えて一礼した後に受け取った。
”私に免じて”を聞いた黎深は蕩けた顔をしているがそれは放っておくことにした。