序章〜1
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「縹月華です。先程は失礼いたしました、旺季様、葵皇毅様」
月華と名乗った少女…いや幼女と呼んだ方がいい歳の頃だろうか。
背格好に似合わない大人びた雰囲気を持つ少女は、改めて座ったままだが頭を下げた。
「旺季様が縹瑠花殿にお願いしたんでしょう?飛燕姫を送る代わりに一人、って。異能のない者なら、ってことで送られてきたのが月華姫」
「と、使いの者が言っていたな。しばらく待っていたが時間がないからと俺たちに説明してとっとと帰っていったぜ。全く、いい加減な。しかも、飛燕姫の代わりに、といった割に随分小さい姫さんを寄越したもんだぜ」
陵王が紫煙で輪っかを作って「見てみろ」と指差す。あやしているつもりなのだろう。
「月華は幾つになった?縹家ではどこまで教育されてきた?」
旺季の問いに、月華はさらりと答えた。
「5歳です。縹家でしっかり教育は受けてきましたので、国試に受かるぐらいの知識は持っています」
皇毅は鋭い視線を月華に向ける。
それに気がついて晏樹も少し声を曇らせた。
「ちょっと待ってよ、たった5歳で国試受験者並みの知識っておかしいでしょ?」
「それが縹家ですから。年齢に関係なく、
今度は孫陵王の視線が上がる。
「ですが、わたくしの武は剣聖の誇るそれとは異なります。それが何かは…皆様なら言わなくてもお分かりでしょう」
月華は少し悲しげに視線を落とした。
「ふぅん…随分小さいお姫様だと思ったけれど、言っていることが本当なら、十分に飛燕姫の代わり、というか、旺季様の駒としては役立ちそうじゃない?なんか旺季様と皇毅が声を揃えちゃうぐらい似ているみたいだしね。ぼくはそこまで思わなかったけど。」
「お前…本人の目の前でそうはっきりと言うなよ。ったく、旺季のこととなったら遠慮がねーな」
「そうだね、でも、月華姫はわかってきているんでしょう?ほら、この桃あげるから意見聞かせてよ」
優しい言葉とは裏腹に、晏樹が目を細めて冷たい視線を送ってくる。
(本当に桃持ってるのね)
そんな月華の感想に気づきもしない陵王が「こんないたいけな子に可哀想に」と小さく呟いているのを、どこか遠くで起こっていることのように月華は視線を外して皇毅をー正確には皇毅の背後に目線を送った。