序章〜2
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飢饉の最中に妓楼通いする者はほとんどいない。
通っていることがわかればいいカモとばかりに野盗や質の悪い民に狙われるだけだ。
出仕する者も減っているが、皇毅や旺季、晏樹はそれでも仕事は続けていた。
「最近は”桃の人”もお手伝いのお嬢ちゃんも来ていないからいつでもいいよ」
と胡蝶に言われていた月華は、昼のうちに姮娥楼に通っていた。
ただし、帳簿付けをしているという、最近こなくなっている少女にうっかり会いたくない、という理由で時間帯をずらして裏口から出入りする日々だった。
月華が胡蝶に頼んだのは、一通りの歌舞音曲を教えてほしい、ということだった。
「詳しくは聞かないけど、なんだって舞や楽器をやりたいんだい?お付きの話だと琴も歌もかなり上手いと聞いたけど?」
胡蝶は綺麗に微笑みながら、暇だからと自ら手ほどきしていた。
「いつか、役にたつ時が来る気がするんです」
(それが、いつかはわからないけど)
月華はほんの少し窓の外の遠くの昊を見た。
「それにしたって、教えることがほとんどないぐらいだよ?きちんとしたところで基礎を習っているね」
「・・・」
月華は薄く微笑んでから、今日の礼を言って退室した。
胡蝶は窓際に立ち、下の月華見て手を振る。
それから、カタリ、と音のした背後へ徐に視線を向けた。
「あの子はあなたがいるのに気づいていましたよ?」
「だろうねぇ、普通の子じゃないからね」
クスクスと笑いながら桃を一つ胡蝶に手渡す。
「僕に聞いても無駄だよ、何を考えているかさっぱりわからないんだ。全く懐かないし、変な子」
「そう…でしょうねぇ」
「今日は胡蝶の舞を見せてよ?」
「えぇ」
胡蝶にとっては一番の贔屓の”桃の人”の依頼を断るはずはない。
「こちらへ」と別の室に促した。
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