序章〜2
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千景が先に立ち、入口にいた店の者と話してから中に促される。
奥の間に通されると、程なくこの店の大旦那と、ひときわ妖艶な女人が入ってきた。
きちんと挨拶をした月華に対し、2人は
「おやまぁ、依頼主というのは随分と可愛いお嬢さんだね」
「紅師のお嬢さんと変わらないんじゃないか?」
と顔を見合わせる。
「話の内容は聞いているよ、それにしても、名も出さず、報酬も要らないとはどういうことなのかい?」
月華は少し難しい顔をしたのを、気に障ったと思ったのか、
「まぁ、我々は商売人なのでね、上手い話には裏がある、と思ってしまうのだよ、悪く思わないでくれ」
と大旦那が胡蝶を庇うように言った。
「いえ…今の立場では名を出したくないだけです。もう数年して世が落ち着いてからなら、食糧の提供者の名を出しても構わないかと。わたくしの名は不要です」
「ふぅん、そうかい」
「わたくしが自らの力で炊き出しをするのは不可能です。そこは、姮娥楼と組連の力をお借りした方がより効果的かと思いました」
どうする?と大旦那は胡蝶を見た。
「わかったよ、この胡蝶が引き受けようじゃないか」
「ありがとうございます」
一つお辞儀をしてから、懐から文を取り出した。
「これは、わたくしから姐さんへのお礼です。もし大切なお客様がいらした時に、おもてなしが不足するようでしたら、いつも桃を持ってきている男に渡してください。きっと、とびきり美味しい桃が手に入るでしょう」
「…」
鐘三つ分の間のあと、胡蝶は大笑いした
「嫌だね、このお嬢さんはなんでもよく知っておいでだよ」
ひとしきり笑ったあと
「もらってばかりだと何だね、私からなにかさせてくれないかい?」
と聞いてきた。
それでしたら、との月華の頼みで、
姮娥楼通いが決定した瞬間でもあった。