序章〜2
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(おおかた仕事は終わったし、宰相たちの講義にはまだ少し時間はあるし…)
雲の姿で月華は宮城の中を歩く。
桃仙人に”あまり近づくな”と言われていたが、府庫までならいいだろうと近くまで足を運んで、府庫の庭が見渡せる木の上に登った。
(ここ、お花見場所(スポット)としていいですわね)
ちょうど盛りを過ぎた桜の花びらが風に揺れてはらはらと舞っているところだった。
その前の庭に視線を落とすと、一人の官吏と時折見かける子供が、何やら話をしているところだった。
それがいつもと違うのは、どうやら怪我の治療をされているらしい。
(遠くの話し声が聞こえる能力とやらはなかったはず…)
と思いながら少し意識を集中させていたが、それはすぐに遮られた。
「さぁさぁ、この木に登るんだ!」
(これだけたくさん木があるんだから、まさか同じところに登ってこないわよね)
足元から聞こえてくる声に首を振って、再度視線を庭に移す。
どうやら治療は終わったらしく、何やら食べている様子だった。
その時、背後から声がした。
「なんだお前、そこをどけ」
「僕が先客ですよ、隣の木はあいています」
「いいから退くんだ!」
バン、という音と「危ない!」という声と同時に、月華の身体は浮いた。
(う、そでしょ…こんな…)
こんなところで突き飛ばされるなんて、という事を考えている余裕はなかったが、このぐらいの高さから落ちる分には、受け身が取れない月華ではない。
が…目の端で下に二人いるのを捉えた分、判断が遅れた。
(お義父様たちに、なんて言い訳しよう‥)
そう思っているうちに、痛みを感じるはずの身体は、とさっという音と共にどこかにスポッと嵌まったようだった。
その瞬間に何かを手で引っ掛けた感触が残った。