序章〜1
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雲は他の侍童と決定的に違うことがあった。
そう、幼すぎたのだ。
幼い者でも大抵の侍童は10歳前後という中、5歳の雲は小さすぎた。
そのため、あまりウロウロしないようにということで行動範囲は限られていたが、小さいことを利用し、時々散歩がてら他のところを目立たぬように歩き、物陰から様子を見る、ということを続けていた。
理由は、いつか何かの役に立つから。
もし襲われたとしても、縹家の暗殺傀儡ー兇手としても育てられていたので、逃げることは簡単だ。
「雲は仕事しないで、今日はこんなところを散歩してるの?」
少し甘ったるい、よく知った声に眉間に皺を寄せてから、雲はくるりと振り返って礼を取った。
「まだ宮城の中を覚えていないので、晏樹様」
「そっか…それにしてもそうやってみると本当に男の子みたいだよね」
「男の子です」
小声で答える。
(なんだってややこしいことを言うんだ、桃仙人)
雲はまた眉間に皺を寄せた。
「やめてよ、その顔。皇毅みたいに見える。雲の方が全然可愛いけどね」
晏樹は面白そうに笑う。
「雲は不思議だよね。皇毅は月華は飛燕に見えるというし、今の雲の表情は僕には一瞬皇毅に見えちゃった。どういうことなんだろうね?」
「さぁ?自分ではわかりません」
晏樹が何やら感づいたかもしれない、ということには思い当たったが、今はまだ答えるときではないだろう。
「そ。まぁいいや。この先は府庫、その奥は後宮だから近寄らないようにね。じゃあまた」
晏樹は指を刺して示してから、ひらひらと手を振って去っていった。
(後宮ね…)
軽くため息をついてから、用心深く歩き、府庫のそばまで来たときに、座り込んでいる少年がいるのに気づいた。
年はあまり変わらないだろうか。
剣の稽古か打たれたのかわからないが、あちこち怪我をしている様子である。
(宮城にいる子供、ということは第六公子かしら…関わるのは得策ではない、と)
物陰に隠れて相手に気づかれないように様子を伺う。
そうこうしているうちに、15歳ぐらいの少年がやってきて、子供の頭を撫でた。
冷たい表情だが、子供に向ける視線は優しい。
(公子たちは仲が悪い、と聞くけれど彼らは違うようね。歳の頃からして第二公子かしら…少し整理しておく必要がある?)
帰邸してからの仕事にしよう、と心の中に留めてそっとその場を去った。