第七章〜VS◯◯
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しばらく重い空気が場を支配した後、口火を切ったのは予想外の葵皇毅だった。
「姫姓を名乗って何になる?紅家がしでかしたことの尻拭いのつもりか?そんなの甚だ迷惑な自己満足でしかない」
とバッサリ切り捨てた。
「尻拭い…?なんのことでしょう…?鄭姓ではない方がいいと思ったのは、もうすぐ生まれる悠舜様のお子様のことを思ってですわ」
皇毅の発言の意図に気がついた春麗は、怯むことなく答えた。
「そういえば、白薔薇ちゃんは例の件の時に、紅家一門から外されてたよね?あれは?」
俊臣が続けて尋ねる。
「紅家一門として主上に膝をつく、という枠組みから外れただけですわ。勘当されたわけではありません」
「だが、先ほど悠舜は、黄家当主の言葉として紅家には返さないと言っていたな」
「えぇ、ですから悠舜様の妹に…でも黄家当主が紅家には返さない、とおっしゃったのは拘束力もありませんでしょう?官吏としての紅春麗が求められているのであれば、元の籍は悠舜様の妹に、姓は姫姓に。今の婚姻後の籍と管理以外のわたくし紅春麗自身の全ては…黄鳳珠の妻として生きてきますわ」
「春麗…」
真っ直ぐ前を向いて言い切ってから春麗は鳳珠を見てふんわりと微笑んだ。
覚悟を決めた春麗の様子は、黎深から見ても、そして邵可から見ても、薔君に瓜二つの気高さがあった。
「ねぇ鳳珠、かつて何度かお会いした…彼の方に似て、ますね」
悠舜が静かに鳳珠に向かって言った。
「あぁ…」
(義母上…)
数回しか会っていないその人を心の中に思い浮かべる。
だが、瞳に宿す光は春麗のものだ。
「春麗姫、あなたはご自身が”
再びの沈黙を破るのように、悠舜が静かに尋ねた。
「・・・さぁ?わかりません。でもきっと、当代の次ぐらいには」
「まぁ、”
(器は紅仙に瓜二つじゃがの)
春麗の答えを受けて、霄がつぶやいた。
最後の部分は口の中でつぶやいただけで、声にはならなかった。
悠舜がハッと霄と春麗を見てややあって、「わかりました」と答え、天を仰いで瞳を閉じた。