第六章〜VS晏樹2
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今日も今日とて凌長官に捕まったところを、葵長官に助けられた。
もう何度目かわからない。
というか、御史台長官はフワフワさん専属の見張り係なのかな?とかしょうもないことを頭の片隅で考えながら、目の前の二人の応酬を無言で眺めている玉蓮である。
「ねぇ皇毅ってばさ、いつも僕がお嬢さんと話している時に来るけど、皇毅の方こそお嬢さんが気になって仕方ないんじゃないの?」
「なぜ、そうなる。私はお前が仕事しないからーー」
「だって、僕が仕事しないから、っていうの、昔から言ってるけど、前はそんなじゃなかったじゃん。結局のところ、皇毅も気になってるってことでしょ?」
「何を馬鹿なことを…」
「ねぇねぇ。お嬢さんは優しいボクと仏頂面の皇毅とどっちが好き?もちろん、僕だよね〜〜」
妓女や後宮女官を蕩けさせるような晏樹の微笑みだが玉蓮からしたら薄気味悪いとしか思えないそれを浮かべて、玉蓮に一歩寄って頬のあたりを撫でる。
ゾワッとした寒気を感じて、玉蓮は無言のまま引き攣った顔で一歩後ろに下がった。
その様子を心から呆れた視線で皇毅が見ていた。
その時、ーーコン、と杖の音がした。
玉蓮は振り返って音の主ー鄭尚書令に向かって、頭を下げる。
(あれ、後ろのおじいさんーというには威圧感がある…誰だろう?)
知らない人が立っているのに気がついたが、とりあえずはそのままの姿勢を保った。
「景官吏、顔を上げていいですよ」
悠舜の声がして、玉蓮は頭を上げる。優しそうな視線に一瞬ヘラっとなりそうになったが、後ろからの鋭い視線に顔を引き締めった。
「言った通りでしょう?」
悠舜が後ろを振り返り、同意を求めた。
玉蓮はもう一度二人を見ると、皇毅はおそらくその人に向かって軽く頭を下げ、晏樹は何やら嬉しそうにしている。
(これは、もしかして・・・)
三人の、というより明らかに前の二人が纏う空気が変わったのを見て、先日めくった貴族録の中の一人ーー旺季を思い出す。
玉蓮は再度その男の方に向き直り、上官に対する礼をとった。
「お嬢さん、私はもう官吏ではないから、そのような礼は不要だ」
頭の上から声がかかり、顔を上げる。
「さすがに…景侍郎の御息女と言ったところだな。聞いていた通りかなり若いが」
「ですが、晏樹の攻撃にも、皇毅の仏頂面にも怯まないし、色々聡くて将来有望ですよ」
悠舜が旺季に告げ、玉蓮は照れくさそうに小さく首を振った。
「旺季様、官吏ではないからとかそういうことではないですよ!」
晏樹がプンスカしている様子を見て、玉蓮は
(ほえ〜〜フワフワさん、なんか犬が尻尾振ってるみたいだなぁ、嬉しそう)
なんて考えながら見つめた。
その隣の皇毅に目線を送ると、考えていたことを読まれたのか、ばっちりと冷たい目線に合ってしまって、パチパチと瞬きをしてから少しだけ誤魔化すかのように笑った。