第六章〜VS晏樹2
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春麗は礼部から戸部に向かう回廊を曲がったところで、前から歩いてきた人を認めて立ち止まり礼を取って待った。
色々と言いたいことはあったが、こちらから言える相手ではないので、黙ってやり過ごそうとするが、今日もその人は目の前で立ち止まった。
「帰ってきたのか…」
「はい」
顔を上げて軽く会釈をする。
「いない間…あの浮遊クラゲが景玉蓮に迷惑をかけていた…」
「あちこちから話は入ってきております…もう進士ではなく配属されていますから、わたくしはなんとも…吏部の方で正式に対応されているようですね」
「とはいえ…迷惑をかけてすまない」
「葵長官が謝られることではないかと思いますけれど…」
「それでも、だ。だが、残念ながら誰かが言ったところで聞く相手ではないので、力及ばずだ」
(葵長官が庇ってくださっていたと柚梨様から聞いていたけれど、本当だったんですのね)
春麗は少し驚いてパチパチと見つめてから、少し首を捻った。
「でも、どうして…」
「あぁ、おそらく、あいつはおかしなことはもう考えていないだろう…それに例のことがあるから悠舜から見張りもつけられているし、変な動きをしたらすぐに連絡が入る。おそらく、色々…ストレスが溜まっているのかもしれない。だからと言って景玉蓮にぶつけていい、というものでもないと思うが」
「・・・」
(確かに、前に見た時は凌晏樹の先にはおかしな動きはなかったと思うけど…でも葵長官がわざわざ言う、というのはどういうことかしら?)
春麗は慎重に言葉を探しながら口を開く。
「そう、ですか…でも、わたくしの時もそうでしたけど、気にしていただいてありがとうございます」
「おそらく、あと数日だ」
「・・・」
「なぜか、は問わないんだな」
皇毅の質問に春麗は少し微笑んでから「きっと、聞いても今は教えてくださらないでしょう?」と尋ねた。
皇毅は何も言わずに、だが少しだけ口の端を上げて春麗を見てから、そのまま立ち去った。
(最近、葵長官はこういう感じで助けてくださることが多い気がする)
心の中で少し微笑みながら、後ろ姿に一礼してから、春麗も反対側に歩き出す。