第六章〜VS晏樹2
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(むむ、今日の書簡は重い…)
戸部を出たところでヨイショ、と風呂敷の荷物を持ち直した玉蓮は、吏部に向かって足を向けたところで、
「玉蓮、こっちだ!」
と背中から声がかかった。
(聞いたことあるけど最近聞いてない声?)
振り返ると、柱の影から紅い衣がひらひらと見え、手招きしているのが見えた。
(え?だれ??でもあの色、もしかして…)
首を傾げていると、すごい勢いで男が出てきて玉蓮の腕を引っ張って柱の影に逃げ込んだ。
「ちょ…」
「久しぶりだな、玉蓮」
声のした頭上を見て、さすがの玉蓮も驚いた。
「れ、れーしんさま?どうしたんですか?黄州に行っているんじゃないんですか?」
「どうしたんですか?って、玉蓮が困っていると聞きつけたのでな。助けに来たのだ。私の可愛い春麗の結婚式には・・・あ、兄上が来るな、と・・・」
フフンと得意げになってから盛大に落ち込んだ黎深を見て玉蓮は
(ちょっと待って、官吏やめたって聞いてたけどここにいていいの??)
と不安げな表情に変わる。
それを見てとって気を取り直したらしい黎深は話を続けた。
「今日は悠舜のところに用があってな、そこで玉蓮が凌晏樹に追いかけ回されていると聞いて助けに来たのだ。この後は吏部に戻るのか?」
「あ、はい…」
(なんでわかったんだろう?)
こてん、と玉蓮は首を傾げたがのを見て黎深は少しだけ笑った。
「では、私が送ってやろう。大丈夫だ、見つからない道は把握している。荷物も少し持ってやる」
「そ、うですか…では、お言葉に甘えて、お願いします」
その時、コツンと杖の音がした
「ダメですよ、黎深。うろうろしないでください」
「悠舜…だが玉蓮の
玉蓮はペコリと悠舜に向かって頭を下げた。
「だから、ですよ。あなたと晏樹が会ったらロクなことにならないでしょう?退官してしまっているのだから、さっさと帰って下さい。それとも、先ほどの話、受けてくれますか?」
「・・・」
「玉蓮姫は私が連れて行きます、それでいいですよね、黎深?」
黎深は渋い表情をしてから玉蓮を見下ろして、頭をひと撫でした。
「わかった、お前に任せる」
「ほら、きましたから、早く」
遠くの足音を聞きつけた悠舜が促し、黎深は「またな」と言ってどこともなく去っていった。
「あの、黎深様は、なぜ?」
「ちょっと私が用があって来てもらったんですよ、お願いがあってね」
「あの様子だと、お願いは聞いてもらえなかったんですか?」
「さぁ、ね。でも黎深のことですから、多分…聞いてくれるでしょう。あ、私がそう言っていたことは内緒ですよ?」
悠舜が少し笑って悪戯そうに片目をつぶってみせた。
「わかりました…ところで、また凌長官がこちらへ?」
「えぇ、来ますね。そちらについても、対策を打ちましたから、そう遠くないうちに効果が出るでしょう。私の足では捕まってしまいますが、ゆっくりと行きましょうかね?」
悠舜は杖をついて歩き始めたので、玉蓮もすぐ後ろをついていった。