序章〜国試編
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受験者からの要望、というか嘆願書という形で回ってきた所感を見て、礼部侍郎の紅春麗はため息をついた。
「魯尚書、例の十三号棟を使おうと思うのですが…」
「藍龍蓮のような受験者が現れたか?」
「それが、女人受験者で、あちこちで問題を起こしているようなんです。どうやら、男性の受験者や武官に言い寄っているようで」
「はぁ?」
魯尚書は意味がわからない、という表情で春麗を見た。
「それも、近頃は自分の棟にはおらず、別の棟に出向いては手を出して歩いているとか」
「さらに意味がわからんな。一人なのか?」
「いえ、もう一人の女人受験者を連れているようですね。二人とも紫州です。後見人は…凌晏樹殿…面倒なことにならないといいのですが、一度、見回りに行って様子を直接見てきます」
(件の女人がいるところは、玉蓮姫と同じ棟だわ。何もないといいけど)
魯尚書の承諾を得て、春麗は受験者のいる棟へ足を運んだ。
「ったく、こんなに籠絡されているとは…」
春麗は聞き取りをしながら、ため息をつく。
どうやらそんなに多くの受験者は被害に遭っていないが、軒並み武官が女人にたらし込まれているようだ。
(でも、武官なんて見張りだけだし、何が目的なのかしら?)
夜中に色っぽい声がしていて眠れないだとか、それを嗜めたら室を荒らされたが証拠がないので言いがかりをつけたようになって揉めた、とか程度の低い話しか出てこない。
(次の棟は玉蓮姫と件の女たち、そして飛翔様の従兄弟がいらっしゃるところね)
春麗はほんの少し口角をあげてから、声をかけた。
「こんにちは」
次の棟に移ると、いかつい男が「どうも。あんた、文官さんだよな?」と声をかけてきた。
(似てる…この方がきっと飛翔様の従兄弟ね)
「はい、礼部の者です。何かお困りのことはありませんか?」
「ある!あるよ!あんたを待ってた。ちょっと待っててくれ、今よんでくるから!」
矢継ぎ早に話して、男は建物に入って行った。