第四章〜研修編3
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志美は吏部官たちと上がってきた書翰をまとめて、尚書令室へ向かった。
「悠舜」
「あぁ、志美ですか?進士の配属はまとまりましたか」
「あぁ、これだ」
書翰を渡して悠舜が確認し始めるのをみると、勝手に茶を淹れて、悠舜と劉輝の前に置き、自分も飲み始めた。
思った以上にくだけた様子で勝手にしている志美を、劉輝が不思議そうな表情でキョロキョロ見ている。
「志美、この茶州のはなんですか?」
「礼部からの推薦、と、櫂州牧からこちらにも一人回して欲しいと依頼が来ていた。どうやら、紅侍郎のところにも櫂州牧が文を出していたみたいでな、魯尚書と是非彼を、と推薦してきた」
悠舜はふむ、と羽扇で軽く仰ぎながら何かを考えている。
「それから、これは別の案なのだが、秋の除目の時に、碧州の立て直しに出していた欧陽玉を茶州に、櫂瑜殿は年齢のこともあるから、黄州あたりにしてはどうか?と思ったのだが…高官は悠舜の采配だから、考えを耳に入れておこうと思って」
(今回の礼部研修もうまくまとめ上げたし、鳳珠のこともあるから早めに紅春麗を一度地方に出さないと周囲がうるさそうだからねぇ、そうなると櫂瑜様がいいと思うんだけど、悠舜に伝わるかしら?)
志美は少しだけ目を細めて悠舜を見た。
「茶州は他の者を考えていたのですけどね…確かに、彼をどこかに回さないといけない…志美の案もいいかもしれませんね、考えておきます」
「そうしておいて」
割とすんなり話がまとまっている様子を見て、劉輝が尋ねた。
「其方たちは仲がいいのだな?」
「えぇ、まぁ、色々縁がありましてね」
「そういうこと」
二人はニヤッと笑って多くを語らなかった。
「失礼いたします。紅春麗、入ります」
そこへ春麗の声がした。
「劉尚書もこちらでしたか」
「進士の配属案を出しにね。礼部から頼まれた件、入れておいたわ」
さらに砕けた口調になった志美に、また劉輝はびっくりした。
「まぁ、ありがとうございます。魯尚書も是非にとのことでしたので、それで決まるといいのですけど…」
春麗はチラリと悠舜に視線を送る。
「おおむねいいと思いますよ、吏部で各尚書侍郎からの評定も取りまとめたのなら、問題ないでしょう」
「ったく、個人名で欲しいと要望が出たのが少なくてね、あとはそれとなく評価から割り振ったけど、偏りが出ないようにするのが難しくて」
志美はうんざり、という表情をした。
「毎年こんなに玉石混合なのでしょうか…?初めてだからよくわからなくて」
「春麗姫の同期を考えても、そんなもんじゃないですか?」
「まぁ、確かにそうですわね…悠舜様の代は御出世された方が多いですけど」
「受かったのが少ないだけよ」
「それもそうですね。確かに、ずば抜けて少ないです、何と言っても悪夢の国試、ですからね」
三人は楽しそうに笑ったが、劉輝は笑っていいのかわからず、目を白黒させていた。