第四章〜研修編3
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六部研修の最終週、課題を出した翌日、玉蓮は吏部尚書に呼ばれた。
「失礼致します。景玉蓮です」
お辞儀をしてから尚書室に入る。
”志美ちゃん”こと劉志美吏部尚書は肘をついてペラペラと書翰をめくっていた。
「お、きたね、そこに座って」
指をさされた椅子に座る。
しばらく志美は玉蓮をじっと見ていた。
玉蓮は一瞬首を傾げたものの、まっすぐになりじっと志美を見返す。
(どうしたんだろう?)
わからないなりにも、なんとなく視線を逸らすのは違う気がして、そのまま真っ直ぐ前を向いていた。
「この課題さ、一人で考えたの?」
急に志美が口を開いた。
「はい?そうですが…」
「どうやって思いついた?」
玉蓮は少し考えてから、「悪口と捉えられたくないのですが…」と前置きをした。
「あぁ、それは気にしなくていい。課題が吏部に関するものだったからね、興味があって聞いてみるまでだから」
「わかりました。それではお答えします。同期の進士たちが、今回の六部研修で、あそこは嫌だ、ここは嫌だ、って言っていたんです。たとえば、戸部は尚書が厳しすぎて無理、とか、工部はお酒臭くていや、とか」
「それは進士たちだけじゃないけどねぇ、気持ちはわかるよ。それで?」
「否定的なところからの消去法では、どんなにけしかけても仕事の生産性は上がらないと思ったんです。でも、もし心からこの仕事をしたい、とか得意分野を活かしたい、とかあれば、それは生産性が何倍にもなるかな、と思いました。その人の能力を最大限に引き出せるのではないかと」
「ふむ」
「戸部や礼部での仕事を見ていてそう思ったんです。尚書や侍郎の采配は確かに厳しいですけれど、その人の能力を最大限に引き出しているように見えました。それで、自己申告とそれに対する評価の仕組みがあれば面白いのではないか、と思いまして…」
「なるほど、ね」
「文句の多い方は論外ですけれど、そうでない方もたくさんいらっしゃるのではないか、と思いましてまとめてみた次第です」
ここでおしまい、とでもいうように、ぺこり、と玉蓮は頭を下げた。
「ありがと。進士にしては結構踏み込んだこと書いていたから、鳳珠か景侍郎にでも相談したのかしらって思ったのよ〜」
いつもの”志美ちゃん”の口調になって、志美は答えた。
「いえ…それは公平ではないと思ったので…同期には少し見てもらって、
「わかったわ。聞きたかったのはそこまでよ」
(景玉蓮、なかなか客観的な眼があるようね)
志美はニッと笑って、「話は終わり、ご苦労様」と退出を促した。