第三章〜研修編2
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全員の視線が、鍛練場の入り口に集まる。
藍色の衣を着た女官と、紅色のー言わずと知れた紅春麗が立っていた。
声の主はどうやら女官の方らしい。
「ちょっとー!そこの虎皮ムサ男!なんで文官の進士たちに武官教育してんのよ!?だったら前から申し入れている女官への武術教育やりなさいよね!!」
”虎皮ムサ男”に武官のみならず進士たちも全員噴き出した。
唯一笑わなかった黒耀世は静かに尋ねる。
「雷炎、あれは?」
「後宮筆頭女官、十三姫。例の藍家の姫だ」
「・・・なぜ?」
「さぁ、前から申し入れられてるんだけどな、面倒だから放置してた」
と言って立ち上がった。
「こちらだってやりたくてやってるんじゃねーよ。兵部尚書からやれって言われてな。どうも、そこのお嬢さんに興味持ったみたいだぜ」
「・・・いくらなんでも、それはおかしいでしょう?わたくしと景進士は違いますわ」
春麗が口を挟む。
「んなもん、俺に言われても知るかっ」
「ったく、断りゃいーじゃないのよ、そこのお嬢さんの代わりに、私と勝負しなさい!」
紅春麗ならともかく、後宮女官が武芸を?と周囲がざわつく。
「韓升、相手してやれ。怪我させるなよ」
「手加減無用よ、私が勝ったら虎皮ムサ男と勝負ね!」
初めは馬鹿にして囃していた武官たちが、十三姫の動きを見た途端に一斉に黙った。
皐韓升と互角かそれ以上に動ける者はそこまで多くない。
(ほぉぉ〜〜すごい〜〜)
玉蓮のみならず、進士たちははポカンと口を開けて勝負に見入っている。
その間に、春麗は勝負そっちのけで白大将軍に「一体どういうことですか!?」と詰め寄っていた。
「大体、先週までの研修ではこんなことやっていなかったでしょう?こちらからお願いした覚えもありません。怪我でもしたらどうするんですか!!」
「ったく、仕方ねーだろ、孫尚書が、今週は面白いのが混ざってるから一日ぐらい鍛えてやれって命令してきたんだから」
「素人にそんなことさせても意味のないことぐらいわかっていらっしゃいますよね?どうして礼部に話してくれなかったんですか!?」
正論で詰め寄る春麗に、白大将軍はたじたじになる。
「雷炎、お前の負けだ。紅侍郎、すまなかった」
黒大将軍が珍しく口を開いて頭を下げた。
「おいっ、耀世!」
何か言いたげな白大将軍を、目で制する。
「わかりました。魯尚書とも相談ですが、礼部から正式に兵部へ申し入れをするかもしれません。その際はご同席いただくことになると思いますので、そのおつもりで」
十三姫と皐韓升の勝負を見るとまだ決着がついていなかった。
これ以上やっても体力切れを待つだけと判断した春麗は、間に入って勝負を止めてから進士たちを連れて引き上げた。
十三姫は一緒に戻ることはなく、大将軍たち相手に、後宮女官の武術訓練を迫っていた。