第三章〜研修編2
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そこから二週間経った。
刑部の研修は尚書不在で特に特筆することがなく、兵部の研修は始まったが組織についてと兵学や兵站などの座学が中心だった。
それまでの研修はそのぐらいだと聞いていたし、実際に玉蓮たちの研修もそのように始まったのだが…
「今日は、それに着替えるように」
と進士服とは別の服を渡された。
「嬢ちゃんは、こっちでな」といわれた室でささっと着替えて出ていく。
「ついてこい」
兵部侍郎の司馬迅自らが引き連れて室を出る。
ただならぬ様子に流石の玉蓮も不安げに飛龍を見たが、飛龍も首を傾げていただけだった。
「ここが、羽林軍の鍛錬場だ」
(なんか、嫌な予感しかしない…)
もう一度玉蓮は飛龍を見たら、同じように眉間に皺を寄せていた。
「今日は、鍛錬に参加してもらう。と言っても素人に木刀を持って戦ってもらっても怪我するだけだからな、まずは基礎体力をつけるところからだ」
「あの、我々は武官になったわけでは…それに、今までの兵部研修では鍛錬はやっていないと聞いています」
たまりかねて進士の一人が口を開く。
「武官の気持ちがわかってこその文官だ。少し方向性を変えてみようと思ってな」
迅は悪びれもせずしれっと言い返した。
「まぁまずは、軽くこの周りを5周ほど走ってみろ」
問答無用、とばかりに尻を叩かれてボチボチと進士たちは走り始める。
ただし、勉強ばかりしてきた彼らにとっては1周で息が上がり始めた。
玉蓮はまだ若い分、体力があったのかなんとか頑張っていると、
「小さいの頑張れー」
誰か知らないが、武官たちが囃し立てて声援を送ってくれるが、流石に四周目で(いや、ちょっと、無理…)と足元がふらついてきた。
(父様、春麗ちゃん、こんなのあるって聞いてないよ…)
心の中で悪態をつきながら、なんとか五周走り切ると、武官たちが拍手をしてくれて、それで少し気分が良くなった玉蓮だった。
が、その側からポイと木刀が放り投げられた。
「次は、剣術だ」
「流石に…やったことありません」
「教えるから心配ない」
「・・・」
壇上でふんぞり返っている虎を肩からかけたむさ苦しそうな男と、隣の黒づくめの無愛想な男の方をちらりと見やったが、何も言ってくれなかったので仕方なく立ち上がる。
(あれが大将軍たちだと思ったんだけどなぁ…衣装の色からすると白家と黒家の方かな?)
わずかな期待はすぐに打ち破られ、玉蓮は「はぁ」と小さくため息をついた。
(弟と昔やってたチャンバラとは違うよねぇ)
端で模擬戦をやっている武官たちの動きを見て、もう一度ため息をつくが、文句を言っていても仕方ないとフルフルと首を振って木刀を握る。
年齢の近そうな若い武官が寄ってきた。
「私は皐韓升です。こんなことするの初めてでしょう?握り方から教えますね」
(優しそうだけど、やるのは確定なんだなぁ)
と思いながら、「よろしくお願いします、景玉蓮です」と挨拶をする。
木刀の持ち方と振り方を教えてもらって、軽く打って模擬戦っぽいことをやってみる。
「上手ですよ」と褒められながらやっているうちに、(結構楽しくなってきたかも?)と思い始めた。
どのぐらいやっていただろうか、へっぴり腰だったのが少しは様になってきた頃に、「ちょっと、何やってんのよ!?」と声がかかった。