序章〜国試編
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どうやら他の受験者がいる棟にも武官がついているみたいだが、”女人受験者”というだけでなんとなく浮き足立って見えるのは気のせいだろうか?
何やらあの意地悪そうな女がこの棟についている武官にコソコソ話しているのを横目で見て、玉蓮はため息をついた。
(何をしに来ているんだか…少し年も行ってそうだし、勉強してたってことはどこかの貴族の娘だろうし…もしかして婚活目当ての受験?)
飛龍と海星は入った時の印象が悪かったらしくあまり話しかけられていないが、その他の受験者には粉をかけて歩いているようにも見える。
(あまり穿った見方をするのも良くない、と父様はいつもいうけど…あれってやっぱりそうよねぇ?)
気分転換と周囲の様子見を兼ねた散歩を終わらせ、自分の室に戻った玉蓮は、「う、そ‥」と呟いた。
室の中が荒らされ、筆は折られ、料紙はビリビリに破かれている。
「ん?どうした玉蓮??」
同じく外から戻ってきた海星が玉蓮の固まっている様子を見て声をかけ、頭の上からひょいと室内を除いた。
「おい、これ…飛龍!」
呼ばれた飛龍も外から入ってくる。
「ったく、誰だよ、こんなことやったやつ?」
「今見てきたが俺やお前の室はなんともなかったぜ。俺たち男どもは半刻ほど外にいたから出入りはなかったはずだ。玉蓮も外を歩いていたな?」
「う、ん。四半刻ほど散歩に。その前は室にいて書き物をしていたから…出た後のことだと思う。外の武官さんに報告してくるね」
「俺らもいこう」
三人は外に出て、武官を呼んだ。
先ほど、あの女と話していた武官だった。
「この棟に出入りしたものはいなかったか?」
「知らぬ」
「知らぬ、ってお前、ここ見張っている係だろう!?知らぬとはなんだ、知らぬとは!」
怒りに任せて腕を上げようとした飛龍を、玉蓮がぶら下がって止める
「ちょっと、飛龍くんダメですよ!乱暴はダメです!あの、私の室がめちゃくちゃに荒らされていて、筆も折られたりしていたんです。誰か侵入したんだと思いますけれど、不審な人は見かけませんでしたか?」
玉蓮はなるべく丁寧に聞いた。
「いや、知らぬ」
はぁ、と海星がため息をつき、飛龍が舌打ちをした。
(知らぬ存ぜぬで逃げ切るってことは、故意に通したか、内部かってことでしょうね…確か、春麗ちゃんが二、三日に一回ぐらいは見回ると言っていたから、その時に会えるといいけど…)
「…そうですか…わかりました…あの、お名前を伺ってもいいでしょうか?」
答えられた名をしっかりと記憶し、海星と飛龍を見た。
二人も頷いたので、「では、失礼します」と声をかけてその場を去った。