第三章〜研修編2
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戸部で用事を済ませてから、兵部に向かう。
(ここにくるのは初めてだなぁ)
ちょっと緊張しながら声をかけて、中に入る。
そばにいた人に「失礼します。あの…」と声をかけ、振り返った姿に玉蓮は一瞬面食らった。
(お、お?)
「どうかしたか?」
「礼部より遣いできました進士の景玉蓮です。紅侍郎から尚書へ直接お渡しするよう言付かっております」
「そうか、こっちだ」
その人は特に気にした様子もなく、案内をしてくれた。
「なんだ、迅か?」
「礼部より、遣いだそうですよ。入れ」
「失礼致します」
お辞儀をして入ると、そこは煙臭くてコホコホと玉蓮は咳をした。
「また窓を閉め切って…今開けるからな、大丈夫かい、嬢ちゃん?」
窓を開けながら案内をしてくれた男ー司馬迅は玉蓮を気遣った。
どうやら、悪い人ではなさそうだ。
「す。すみません」
「おー、ちっこいのがきたなぁ、嬢ちゃん、噂の景柚梨の娘かい?」
「はい、景玉蓮と申します。本日は礼部の遣いで参りました。紅侍郎から、尚書自ら全て目を通してくださいと依頼を受けております」
「お、そっか。じゃあ悪いが、ここに置いて、そこで待っててくれ。待っている間暇だろう、飴でもやるよ」
書簡を机案の上に置くと、代わりに瓶を差し出される。
中を見ると綺麗な色の飴が入っていた。
「俺の同志の置き土産だ。うまいぞ」
「い、いただきます…」
恐る恐る一粒とって舐めてみたら、普通に美味しい飴だった。
口の中でコロコロ転がしながら、先ほど案内してくれた人をそっと見る。
(おでこにあれがあるってことは…)
失礼にならない程度にそっと視線を尚書にずらす。
尚書に対しては敬語で話しているが、挨拶もそこそこに自由に出入りするところを見るとそれなりの立場の人なんだろう。
どうやら、尚書はタバコが好きで豪快な人らしい。
(昔は将軍だったのかな?)と体格の良さから推察する。
兵部尚書は文官だが、明らかに父親や鳳珠と体格が違う。
「ん?嬢ちゃん、どうした?」
「いえ…なんでもありません…初めてお伺いしたので、つい珍しくてキョロキョロと…」
「そりゃそうだよなぁ。だが、俺に何か言いたいことでもあるんじゃないのかい?」
「え、っと…」
「大丈夫だぜ、怒りはしない」
「あの…尚書はとても体格がいいので、将軍をされていたのかな、と思ったまでです」
孫陵王と司馬迅は顔を見合わせた。
「フハハ、面白いところに気がついたな。あぁ、俺は元武官だ」
「よく気が付きましたね」
陵王は何か思いついたのかニヤリと笑ってから書翰を机案に戻していった。
「戻ったら紅春麗に”この件は了承した、後は任せた”と伝えてくれ。ご苦労だったな」
「かしこまりました。それでは、失礼致します」
ペコリとお辞儀をしてから室を出た。
「あの嬢ちゃん、なかなか面白いかもな」
「物おじしないというか…不思議な感じですね、陵王様みても動じない度胸があるようです」
「あの子は兵部研修はまだだったよな、実は晏樹から頼まれてたんだ。おい、こんなんはどうだ?」
二人はボソボソと声を落として計画を始めた。