第三章〜研修編2
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同じ頃、同じ店の隣の室には、ここを紹介した碧珀明と、同期の紅春麗がいた。
「だいぶ以前に上奏した、女人医官の件ですけど…あれ、もしかしたら旺季殿か凌晏樹殿に潰されてしまったのではないかと思っていて」
「詳しいことはよくわからないが、色々あったからな…貴族派に潰されていてもおかしくは無いと思うが、なんでだ?」
「もともと、あちら側は女人官吏反対だったのですよ。だから、わたくしがあげたものは全て潰されてますし、女人医官なんてとんでもない、と思ったかと…」
「なるほど…」
珀明はしばらく考えてから「もう一度、あげてみるか?」と言った。
「新進士で何人か女がいるだろう、これから増えていくことを考えると、やはり女人医官はいた方がいいと思う。ただ、一度潰されたものをどう出すか、だな…」
「今回、中書省に尚書が入りましたよね。そこから正攻法で手続きを進める、というのはどうかしら?」
「藍州にいた姜文仲殿だよな、面識はあるのか?」
「ご挨拶程度には…黄尚書の同期なので」
「そうか、なら行きやすいかもしれないな。どんな方か知らんが、出世するには知っておいた方がいいだろう。俺も一緒に行く」
「わかりましたわ。控えをまだ数冊残してますから、明日、宮城に持って行きます」
店の者が采をおいて出ていき、二人は箸をつける。
「あら、美味しいですわね」
「だろ、安くてうまいから若者に人気だ。新進士の馮海星に、どこかいい店ないかって聞かれて、ここを紹介したからその辺にいるかもしれないな。なんでも、仲間と情報交換するらしい」
「まぁ、だったら榜眼の謝光泉殿と探花の景玉蓮殿、あとは管飛龍殿ですわね。あの四人…というか、三人は国試の時から連んでましたから、おそらく謝進士が榜眼だったことで引き込まれた可能性が高いかと」
「俺たちみたいなもんか?」
「あの時ほどひどくは無いですけどね…今年も小さな騒動はありましたから、それで仲良くなったようですよ」
珀明はふっと笑ってから「小動物は元気にしてるか?」と聞いてきた。
「えぇ、五丞原で決着がついたときに、乗り込んできてました。その時はとても元気そうでしたわ。秀麗から色々連絡が入っていたのと、櫂瑜様に碧州に医師団とともに送り込まれたと」
「あぁ、俺のところにも碧州にいる、って連絡が来たな。できる限りなんとかすると書いてあって…正直、ホッとした」
その時のことを思い出して、珀明は安堵のため息をついた。
「櫂瑜様からもできれば今年の進士で有望そうなのを一人送り込んで欲しいと要請があったので、吏部と相談ですわ。ただあそこは影月さんがいるから、不要なんじゃないかと思ってますけど」
「櫂州牧はずっと地方なんだろ?戻ってきてもらって俺たちも直接師事したいものだな」
「どうしても名誉職は嫌なんですって。現場がお好きとか。今なら茶州もいい医官がいるし、影月さんもいるから安心だけど、年齢を考えるとね…人事に口を出せる立場ではありませんが、ちょっと囁いておこうとは思っています」
(おそらく櫂瑜様はご自身の年齢を考えてのことだと思うけれど、まだまだ頑張っていただきたい…送り込みは賛成だけど、ただ、今年は玉石混合というか…全体的に質が悪いのよね…)
春麗は考えてからひっそりとため息をついた。