第二章〜研修編1
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礼部での会話があった頃、戸部では小さな事件が起きていた。
「午後の仕事を割り振る。景玉蓮は碧遜史について、仕上がってきた資料の検算をしろ。管飛龍は景侍郎について書翰の清書、残りの者は書翰整理と書翰周りに別れてもらう。これから先の指示は明日以降も景侍郎から受けろ」
「はい」
玉蓮と飛龍は返事をしたが、残りの三人は黙ったままだった。
「質問があります。なぜこの二人とこちらの仕事に差が出ているのでしょう?及第順で言えば景進士は確かに探花でありますが、管進士はこの中では一番下です」
この発言の瞬間。
戸部官は全員、バッと進士の方を見た。
だが、発言した当人の背中側にいたため。進士たちは気づかない。
「だから、なんだ?」
尚書の声が一段落ちる。
「及第順位が上の私たちの方が、管進士がやる仕事や景進士がやる仕事を担った方が相応しいのではないですか?」
きっちり二拍分の静けさが包む。
景侍郎以下、戸部官たちは、(終わった…)と一様に諦め顔になったと同時に、次に起こることを想定してそっと耳を塞いだ。
「馬鹿者が!!」
と黄尚書は大音声で一喝し、立ち上がった。
続けようとして息を吸ったところに、「申し訳ございません」と声がかかる。
声の方に進士も戸部官も尚書も視線を送ると、紅春麗が膝をついて礼をとっていた。
「魯尚書はじめなぜ官吏になったのか、官吏は何をすべきかということを説いてきたつもりですが、まだ不足していたようです。本日のところは礼部に免じてお許しいただけないでしょうか?」
「紅侍郎、この埋め合わせはどうすると?」
「明日の研修後から、魯尚書直々の指導を入れることにいたします」
「ほぅ…魯尚書の、ね」
「はい。朝の宮城の掃除だけでは不足していたようです。申し訳ございません。よって、明日からは進士たちを定刻で上がらせるようにしていただきたいのですが」
「わかった」
黄尚書は納得したのか、席に座り「早くやれ」とだけ促した。
「ほら、尚書がおっしゃっているでしょう?それぞれ言われたお仕事を始めてください。あなたたち御三方もですよ」
「はい」
玉蓮はとことこと碧官吏に近づく。
戸部で一番初めに名前を覚えた、饅頭をくれたおじいさんだった。
(戸部内での書翰配りで大体の人の顔と名前が一致していたからよかった)
「よろしくお願いいたします」
ペコリと頭を下げると「ここに座るといい。早速頼むよ」とばさっと書翰の束を渡された。
(戸部は官吏の人もお仕事の仕方がほーじゅ様みたいなんだなぁ…こんなにたくさんどっさりきたよ…)
ぼんやりと思ったが、間違えてはいけないと、パチン、と顔を叩いてから算盤を出して仕事に取り掛かった。