第二章〜研修編1
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研修が始まって四日後の昼過ぎ、礼部侍郎・紅春麗は上がってくる報告書を見ながらため息をついた。
(やはり戸部開始組は玉蓮姫と飛龍殿しか持たなかったか…)
初日はなんとか持ったが、翌日から一日が終わるごとに、一人減り、二人減りで、四日目の今日は午休みに三人目が”明日からしばらく休みたい”と礼部に申し入れてきた。
「黄尚書はその方の能力のギリギリを見極めてお仕事を振る方です。あなたにそれができないはずがありません、本当にお具合が悪いなら休ませますが、医官の診察が必要です。そうでないなら別の部署の研修が始まったら復帰するなど甘いことでは困りますが、診察を受けられますか?」
バッサリと春麗は言って、脱落者は休ませることなく、戸部でもっぱら書類整理と雑用のみをやらせている。
「戸部はやはり脱落者が出たようだな」
報告書をまとめて魯尚書に持っていくと、開口一番に言われた。
「えぇ、景進士と管進士については高官が身内のために黄尚書の当たりが辛くなるのは想定していたんですけれど、その二人はそんなにたいへんって思っていないようで、楽をしていると思われる周囲の方が脱落していきました。休ませるわけにもいかないと言ったところ、書類整理させているみたいです。この後、今日は戸部で仕事をするので少し聞いてきます。夕刻に一度戻ってきます。」
「今回は尚書採点もあるから、特に厳しくしているのかもしれないな。まぁ黄尚書の仕事はギリギリを見極めて振る、というやり方だから、やろうと思えばできるが、怠けたいものにとっては地獄だろう。自分の行く末に降りかかるということも気づかずに、愚かな…明日以降、研修後に私の講義をつけよう。進士たちにはありがちなことだが、曲がった根性を叩き直してやる。」
仕事には厳しい魯尚書の採点は辛い。
春麗はクスッと笑ってから、「そのようにいたしましょう。ところで…」と話題を変えた。
「厳しいと言えば、吏部もそのようなんですよ。進士たちからの苦情…というか文句が多いのは、戸部、吏部、工部の順です。最も、工部は管尚書のお酒攻撃で撃沈して、本人たちから報告を上げるのが三日酔いあけになって一斉に来たって感じですが。吏部は紅尚書の時と違って侍郎に丸投げじゃなくて、劉尚書は割と進士を一人ずつ見ているようですね」
「まぁ紅黎深殿は…そういうことはやらんからな。だが彼の配置は適材適所だった。劉尚書も聞いた話では人を見る目はお持ちのようだから、それなりな配置を行うだろう」
「そうですね。まだあと一月半ありますから…どう転んでいくか楽しみですね」
「紅侍郎、新進士教育の面白さに気づき始めましたね」
魯尚書が珍しくニヤリと笑ったのを見て、春麗は礼をして戸部へと向かった。