序章〜国試編
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案内の武官の後ろをついていく。
国試受験者の泊まり込む施設は、それなりに普通だった。
まだまだ女人受験者は多くないが、二度目とあって10人ほどいたのでいくつかに振り分けられていたらしい。
共有部屋は男性と混合になっているそこへ案内された。
「よろしくお願いします」
挨拶をして室に足を踏み入れる。
「ここは子供が来るところじゃないのよ、帰りなさい」
少し年嵩の女性が口を開く。
その横で、もう少し下の女性が頷いた。
「おー、随分と小さい嬢ちゃんがきたモンだなぁ。まぁそう言うなって。俺は管飛龍、白州からきた。よろしくな」
歳のころは二十過ぎのいかつい男性に挨拶をされた。
「よろしくお願いします。景玉蓮です」
言ってからペコっとお辞儀をしたが(どこかで聞いた名前?)と玉蓮は首を傾げたがすぐに思い出せなかった。
「噂の紫州州試で首席だった子だね、少女だって聞いていたけれど、一昨年の状元の杜影月官吏と大して変わらないのな」
周りから声がして、年嵩の女性がキッと睨んだ。
「その年で主席、なんてあり得ないじゃない。一体どんな手を使ったのよ?聞けば、戸部侍郎の娘だっていうじゃない?紫州で忖度が合ったに違いないわ」
(あぁ、早速…そういうことね…)
玉蓮は曖昧に微笑んでから「そんなことはないと思いますけど?」とだけ答えた。
「国試は甘くないのよ、だいたい高官の娘が…」
「まぁ待てや」
低い声がして、管飛龍と名乗った男が遮った。
「国試は甘くない、んだろ?だったらそれなりにきちんとしてるんじゃねぇか?それに、高官の身内が受けちゃいけないって決まりはないし、この嬢ちゃんの父親より俺の従兄弟の方が、官位は上だぜ?俺、白州の州試、ケツの方だけどな」
「あっ!」
「どーした?」
「いえ、あの、なんでもない、です…、すみません。ちょっと思い出したことがあって」
(父様より官位が上、ということは、管飛龍さんは、あの飲んだくれのイカつい尚書さんの従兄弟さんなのね!)
玉蓮は鳳珠の邸で一度だけ会った、大酒飲みを思い出してふむふむと頷いた。
が、ここで言うのは火に油、と黙っておくことにした。