第二章〜研修編1
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研修後、六部研修がある三十名は各部を回って挨拶をする、ということになっていた。
時間の都合で一日一部署にしていたため、毎日ゾロゾロと宮城を歩くことになる。
「各部の場所を正確に覚えていただかないといけないですからね。どういう仕事が振られるかはわかりませんが、関連する部門も覚えてもらうことになります」
回廊を曲がったところで、前からくる二人に目を向けた春麗は、立ち止まって礼をとった。
同じように進士たちもする。
「おやおや、ゾロゾロと小鴨を連れて、毎日大変だね。顔を上げていいよ」
(やっぱり捕まった…)
春麗はうんざりとした表情を出さないように、少し引き締めてから顔を上げる。
進士たちも同様に顔を上げた。
(なんか…ふわふわした人がいる…)
玉蓮は最初に目に入った男を見てそう思い、その隣に視線を送ると無表情の鉢巻姿が見えた。
「みなさん、こちらは門下省の凌晏樹長官、それから御史台の葵皇毅大夫です」
進士たちが一斉にお辞儀をする。
「ふぅん、それなりにちゃんと躾けてるんだね。来年は四省の研修も入れてよ」
「魯尚書と相談しておきますわ」
「それにしても…随分小さい子がいるんだね」
(おっと、偉い人からもキター)
玉蓮はそれと気付いたが、素知らぬふりをして真っ直ぐ前を見た。
つつつ、とふわふわな男が寄ってきて、ポンポンと頭を撫でた。
「君が大人になったら、僕が相手をしてあげるよ?」
「私が大人になったら…凌長官はおじいさんになってしまいますね?」
「なっ…!!」
衝撃の表情で固まった凌晏樹の横で、無表情男がわずかに表情を変えてクククと笑い出した。
「そりゃ、その娘の言う通りだな」
(おおーハチマキさん、表情あるんだ…)
ほぇ〜という表情を出さずに、心の中で感心すしているが、会話は勝手に進んでいく。
「お前、父親と年齢変わらんだろう」
(やはり父様ぐらいの歳なんだ。でも四省の長官、ということは父様や鳳珠様より位が上ということなんだね)
色々気をつけないと、と考えながら、ハチマキさんの様子を見る。
だが声は横から聞こえた。
「やっぱり僕、君が嫌いだな。皇毅の方に興味あるみたいだし。じゃね」
スタスタと歩いて行くふわふわ男。
「全く…晏樹が馬鹿なことを言って邪魔したな。あいつはあぁいう奴だ、気にするな」
「はい」
玉蓮が答え、春麗が軽く礼をすると、皇毅も立ち去った。
ふぅ、と春麗は息をついてから、「さて、向かいましょう」と歩き出す。
だが玉蓮がチラリと見ると、春麗の表情は少し硬かった。
(何かまずいこと言っちゃったかな…まぁおじいさん、って言ったのはまずかったかなぁ…)
玉蓮はほんの少ししょんぼりしながら足を進めた。