第一章〜進士式編
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その後、事前に想定した通り、悪夢の国試組の激しい飲み会に発展してしまったため、春麗は飛龍と玉蓮を連れて別室に移った。
「劉尚書や姜長官も入れると、揃うのは鄭尚書令が茶州へ出た10年前以来らしいから、あちらはあちらで楽しんでもらいましょうか。飛龍殿も飛翔様みたいにお酒強いんですよね?」
と、一升瓶を抱えて春麗が戻ってきた。
侍女がそのままお菓子やらつまみやら、玉蓮用の飲み物も用意して出ていく。
「改めまして玉蓮姫、飛龍殿、国試及第おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「明日から研修ですからね、飛龍殿は飲みすぎないでくださいよ?」
「ねぇ春麗ちゃん、研修、ってどんなことするの?」
春麗は飛龍と自分に酒を注いでから、そうねぇ…と少し考えながら口を開いた。
「明日、きちんと説明をするからその時によく聞いておいてほしいんだけれど、明日は進士式の後、今後の流れの説明と、宮城の見学をしますわ。それからしばらく礼部で講義を受けてもらって、ある一定の上位及第者は六つに分かれて各部を回りながら研修です。それ以外の方は吏部試ですね。それが終わってから配属、って感じかしらね」
「今までもそういうやり方だったのか?」
「いいえ、過去はいろいろあったみたいで…六部を回るのは今回が初めてです。だから、様子を見ながら少しずつ修正することになるでしょうね」
「各部の研修、ってことは、あちらの尚書様たちのところを回るの?」
「えぇ、そうよ」
飛龍がうへぇ、といういやそうな顔をして「俺、絶対に飛翔兄のところでこき使われるぜ…」と肩を落とした。
春麗はクスクス笑いながら続けた。
「まぁ、飛龍殿がこき使われるのは飛翔様のところだけではないかもしれませんが…頑張ってくださいね。あぁ、それから、もし困ったことがあったら、かならずわたくしに報告してください。それは進士同士でもそうですし、他の官吏から何か理不尽なことをされた場合もです。進士の管理は礼部の仕事ですが、他の礼部官ではなくわたくしにお願いします。毎年、いろいろあるようなのですよ…」
「春麗ちゃんたち、大変だったんでしょう?父様が毎日怒ってたよ」
「あらまぁ、そうだったの?まぁ、わたくしの時は女人国試が初めてだったし、状元が最年少だったりで色々例外が多くて…皿洗いや靴磨きもやらされたわね。さらに国試や研修担当である礼部で高官の不正や横領があったりしたので、余計ですけどね。その不正があったので、今年の国試は立て直しだったんです。それでやり方を結構変えているので、反発が出るかもしれませんから、何か言われたりしたら、必ず」
「あぁ、わかった。それにしても、みんな自分勝手だよな。国試とか研修はずっと礼部なんだろ?一番わかって考えてやってるところに文句言うって納得いかねーよな」
ぐびっと飛龍が酒を飲んだ。
仕草も飛翔に似てる、と春麗は思いながら続ける
「そうですね…思った以上に理不尽なことも多いと思います。まだまだ宮城は落ち着きませんし、足の引っ張り合いみたいなところもありますから、困ったときはお仲間や信頼できる大人に相談すべきだと思いますわ。わたくしも、常に鳳珠様と柚梨様、魯尚書に相談しておりますし、吏部には信頼できる同期がいますので、彼にも登城の際によく話していますわ。あぁ、待ち合わせして一緒に行っているんです。」
「春麗ちゃん、鳳珠様と一緒に行ってるんじゃないの?」
「えぇ、いろいろ事情がある時とか、彼が泊まり込みの時は鳳珠様の俥に乗せてもらってますけど、晴れている日はこの近くで待ち合わせして、一緒に歩いて行っているのよ。情報交換がほとんどの目的だけどね。お昼もよく一緒に食べているわ」
「へぇ〜なるほどね!飛龍くん、よかったら私たちも待ち合わせして行かない?」
「あぁ、俺は構わないぜ。近くまで迎えに行ってやる」
「お二人も、いい関係になれそうですね」
春麗の言葉に、玉蓮と飛龍はちょっと照れくさそうに顔を見合わせた。