序章〜国試編
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「もうちょっと、鳳珠様、それじゃ見えてしまいますよっ」
「私だって心配なんだ、受けるといいと言って後見も引き受けたが、まだ14歳なんだぞっ」
「そんなこと、わかってましたでしょう?父親の柚梨様がついていらっしゃるから大丈夫です。それに、中に入ることはどのみちできないんですから。全体見回りの時にわたくしが行きますので、それまで待っていてくださいとあれほど…」
「心配してはいけないのか?」
「気持ちはわかりますけれど…今の鳳珠様、まるで秀麗が侍童で働いていた時の黎深叔父様みたいですわよ」
”黎深みたい”と言われた黄鳳珠は心外だ!と呟いてから黙った。
止めていた紅春麗は、だって…と小さくつぶやいた。
「鳳珠、春麗ちゃん、影からの見送り、ありがとうございます」
笑いながら景柚梨が近づいてくる。
「こちらからは丸見えでしたよ。もっとも、娘は前ばかり見ていて、気づいていませんでしたけど」
「すみません柚梨様。どうしても鳳珠様が心配だと…」
「あの子もそこまで心配してもらえて何よりです。それにもう一人…」
「えっ?」
二人が隠れていた木の裏の茂みがガサガサと鳴ったと思ったら、ニョキッと頭が生えた。
「きゃっ」
春麗は驚いて鳳珠にしがみついてから恐る恐る顔を向けると、そこには…先ほど話題にしていた”叔父”の紅黎深がいた。
「なんだ、叔父様ですか…」
「なんだとはなんだ。お前、私の気配がわからなくなったのか?それからそんなに鳳珠にくっつくな」
「黎深、お前、何をしにきた?」
「何って、柚梨の娘の様子を見にきたに決まっている」
(なんで??)
三人の頭に一斉に疑問符がついたが、お構いなしに黎深は続けた。
「見たところ、一人ずば抜けて若いな。春麗たちのようにいじめられなければいいが」
「わたくしの国試の時は、龍蓮殿の騒動の方がすごかったですからね、進士時代の方が酷かったですわ。それより叔父様、絶対に、絶対に姫に会いに行ってはいけませんからね!!」
「なぜだ?」
全くわからない、と言ったふうに黎深は聞き返した。
「いいですか、ただでさえ一人ずば抜けて若いのですから下手に注目されがちなのに、叔父様が行ったら、”元吏部尚書が絡んだ不正があった”って言われてしまいます。わたくしたちの時の二の舞です」
「ふん、そんなことあるわけなかろう」
「火のないところに煙は立つんです。あの騒動をもう忘れちゃったんですか?」
「黎深、おとなしくしていろ。今回は春麗が女人受験者には武官も付けていて人の目もある。大丈夫だろう」
「心配してくださってありがとうございます。あの子は…意外と逞しいですから大丈夫でしょう」
言いながら、(だからこそ心配なんですけどね、うまく抑えてくれる人が出てくるといいんですけど)と心の中で呟いて、柚梨は門の方をもう一度見た。