第一章〜進士式編
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「邪魔するぜ」
工部尚書・管飛翔は珍しく礼部に顔を出した。
「魯尚書と話がしたいんだが」
「尚書室です、今ならお客さまもいませんから、どうぞ」
よく見ると、小さく挨拶をしながら長らく空席だった中書省の長官になった姜文仲が後ろからついていく。
滅多に礼部で見かけない顔合わせに、普段比較的静かな礼部官たちは、何事かとヒソヒソと話し合った。
「管尚書に姜長官、珍しい顔合わせですね」
二人が挨拶をして尚書室に入ったと同時に、魯尚書は用件の向きを察したのか、表情を和らげて迎え入れた。
「管尚書、管飛龍殿の及第、おめでとうございます。姜長官は管飛龍殿と馮海星殿の後見でしたね」
「えぇ、馮海星は藍州で秀才と名前が聞こえていましたが、如何せん家も弱く後ろ盾がないため、州牧だった私が後見に入りました。管飛龍殿は、飛翔からの依頼で」
「俺と一緒で学はからっきしダメだからよ、箔を付けるには文仲殿についてもらうしかねーな、と。でも思ったよりいい順位での及第で驚いたぜ」
「そうですね。州試では下の方でしたから」
魯尚書は改めてざっと及第者の一覧に目を通しながら答えた。
「失礼します。紅春麗、入ります」
「おー、嫁!」
「なんですか飛翔、その呼び方は」
「鳳珠の嫁だから、嫁。鳳珠も何も言わないからそのまんま呼んでるぜ?な?」
春麗は「飛翔様のお嫁さんではないんですけどね…」と苦笑いしながら答えてから、魯尚書と同じく祝いの言葉を述べた。
「なぁ、飛龍は上位及第って言えないだろ?景侍郎の娘のために上位で受かれって言っておいたが、どうなんだ?」
春麗は魯尚書と顔を合わせて、クスリと笑った。
代わりに、魯尚書が答える。
「景玉蓮のため、というわけではないが、少し見てみたい人材も何人かいたので…まぁ、管飛龍もその一人だ。そもそもは上から二十四人を特別研修に回そうと思ったが、六人増やすことにした」
「何名を対象にする、というのは出していたんですけれど、合格者が決まってから朝議報告、と思っていたので、魯尚書が調整いたしましたわ」
「紅侍郎の時もそうだったが、今年の受験者の中での目玉の景玉蓮はあの景侍郎の娘だ。否が応でも特別扱いになってしまうがな、結構面白い人材が揃っている。何人か頭角を表す者が出てくると思う。状元の馮海星と、管飛龍もそのうちの一人だ」
魯尚書がニヤリと笑った。
「また魯尚書のシゴキが待ってますわね…」
「あれ、やるのかよ?黎深たちが厩番やってたやつだろ?今年は上の方は持ち回り研修じゃなかったのか?」
「持ち回り研修も魯尚書が元々やられていた朝廷預かりと吏部試を組み合わせた形にした物ですけど、例の新人教育は、入ってくる人たちによるようですけれど、尚書になられても必要時は継続、だそうです」
「ま、飛龍のやつは多少シゴいたところでなんともないから、なんなら矢面に立たせてくれ。うまく使ってくれて問題ないぜ」
飛翔はウヘェ、という顔をしてから言うと、文仲も頷いた。