第八章〜VS◯◯
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実は州府の中からつながっているのよ、と州尹邸に案内される。
どうやら、州府を挟んで両端に州牧邸と州尹邸があるらしい。
基本的に官吏が州尹邸に入ってくることはなく、よほどの時は控えの間で取り次ぎをされることになっているから心配しなくていい、とのことだった。
「おかえりなさいませ。玉蓮姫、ようこそいらっしゃいました。無事のご到着で何よりですわ」
鳳珠の邸でよく世話になっていた瑞蘭が控えていた。
「お世話になります、よろしくお願いします」
「お荷物はもう入れてありますので、お室へご案内します」
「瑞蘭、あとはお願いね、わたくしは一度戻りますが、今日は早めに帰ってくるのでお食事は一緒にしましょう」
と言い残して、春麗は州府に戻って行った。
「今日ぐらい定刻で上がられるかと思いましたのに」
瑞蘭がはぁ、とため息をついてから「貴陽にいる時と全く変わらないんですよ。むしろ、隣に住んでいるせいか、帰りが遅いぐらいです」と玉蓮に話しかけてから、こちらへ、と案内を始めた。
州尹邸の大体を案内してもらってから与えられた玉蓮は室に入る。
荷物から箱を取り出し「これ、みなさんで」と瑞蘭に渡した。
「ありがとうございます、遠慮なく」
と笑顔で受け取ってもらえて少しホッとした玉蓮は小さく笑った。
「お疲れになりましたでしょう?」
「はい、やはり緊張してたみたいですね。瑞蘭さんの顔を見て少し安心しました」
「あら、そうですか?それはよかったです。あの様子ですと春麗様のお戻りには一刻近くかかると思いますので、それまでお寛ぎください。お茶をお持ちしますわ」
と瑞蘭は一度でて行った。
くるりと室を見回してから、運んでもらった荷物を開く。
自分の使いやすいように荷物を出しながら配置していると、瑞蘭がお茶と小さなお菓子を持ってきてくれた。
「まだ林檎の季節には少し早いですが、硬いりんごにお砂糖をかけて焼いたものを挟んだ
少し苦笑いをしながら説明する瑞蘭を見て、玉蓮は(なんとなく察しちゃうよね…)と心の中で呟いてから「頂いてみます」と席についた。
「州尹邸で勤めている者も何人かいますが、この小さな棟は完全に個人的な空間にしているので、基本的には私が一人で見ています。時々、隣の黄家から応援が来ることもありますけれど、事前にお伝えしますのでご心配なく。玉蓮様にも快適に過ごしてお仕事を頑張っていただけるようにいたします」
といって下がろうとした瑞蘭を引き止めて、玉蓮は少し話し相手になって欲しいと頼んだ。
やはり、知らない土地に一人放り込まれたのは寂しく思っているのかもしれない、と瑞蘭はそれでしたら…と口を開いた。
「そうですね、春麗様は夜は一度お戻りになりますが、基本おやすみになる時はこちらにはいらっしゃいません。朝になれば支度しに戻ってきますので、ご心配なく」
突然言われた一言に、玉蓮は「え?」と首を傾げた。
その様子に瑞蘭は「私から聞いたことは内緒にしておいていただきたいのですけど、実はですね…」と少しイタズラそうに切り出した。