第八章〜VS◯◯
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二日前は鳳珠の邸に柚梨とともに招かれた。
飛翔と紅州にいた邵可も来ていた。
「嬢ちゃん、寂しいかもしれないけど半年だ、頑張ってこいよ」
「飛翔、その呼び方はなんだ?」
「工部に使いによく来るから、工部官たちから”嬢ちゃん”って呼ばれてるんだよ、元は凛姫が”玉蓮姫”って呼びかけたのがきっかけでな、確かに貴族のお嬢さんだけど官吏に姫はな、って事で嬢ちゃんで落ち着いたようだ」
「そうなのですねぇ」
そう呼ばれていることは知っていたが、由来までは知らなかった玉蓮は少し楽しそうに笑った。
「玉蓮姫、春麗がお世話になると思うけどよろしくね」
邵可の言葉に柚梨が「こちらこそ、ですよ。州尹邸に居候させてもらいますし」と頭を下げる。
「一度ぐらい、私が顔を出して様子を見てきますよ、この中であちこち飛び回れるのは私だけですからね、ちょうど、黄州に用事もあるし」
と柚梨に邵可が申し出た。
「ありがとうございます」
という柚梨と一緒に、鳳珠も軽く頭を下げた。
「嬢ちゃん、陽玉んとこのボンと一緒に行くんだろ?」
(えっと、陽玉さんは綺羅綺羅さんのことで、碧官吏はお家の本家だから…)
「そうです!碧官吏とご一緒です」
「そっか。やっぱりアイツ、帰ってきてもボンとは入れ違いで茶州行くことになるかもな」
「そうですね。欧陽侍郎は碧官吏のこと、かなり気にしてますから…国試を受けられる頃から、よく侍郎会で話題に出してましたよ」
柚梨はその頃のことを思い出しながら口を開いた。
どちらかというと辛辣なことをいうことが多い彼が、いつでも大きな期待を込めて話していたのが印象的だったのでよく覚えていたのだ。
「碧家も紅家に負けないぐらい、身内の結束は固いからね」
「官吏が少ないというもあるだろうな。うちの碧遜史もそろそろ年齢的に引退しようかと言い始めているが、そうすると中央は碧官吏だけになってしまう。あぁ、今年入った謝光泉も碧門だったな…」
「え?おじいさん、辞めちゃうの?」
玉蓮がびっくりして鳳珠を見つめた。
「いや、まだだ。少し前から、そろそろ考えるとは言っているけどな、碧官吏が入朝したから心配なのでしばらくいると言ってはいた」
「玉蓮は、研修の時にお世話になってましたよね」
「うん。まだいらっしゃるならよかった」
(いない間にやめちゃったら、碧官吏がっかりしちゃうよ)
と思いつつ、自分もがっかりしていることに玉蓮は気づいていなかった。
「御館様、鄭悠舜様がお見えになりましたのでこちらにお通ししてよろしいでしょうか?」
扉の外から声がかかる。
「あぁ、頼む」
と言ってしばらくしてから、悠舜が室に入ってきた。
「遅くなってすみませんね、玉蓮姫」
「こんばんは。お会いできると思っていなかったので驚きました」
「皆さんも遅くなりました。鳳珠から話は聞いていましたが、俊臣殿に捕まって遅くなりました」
「あ〜〜」
一様に、それは仕方ない、という顔をして納得する。
飛翔が椅子を引き、悠舜が座ると、玉蓮がトコトコと歩いて行ってお酌をした。
「お忙しいのにありがとうございます」
「しばらく会えませんからね、せっかくですから。邵可殿には最近よくお会いしますね」
「えぇ。では、悠舜殿の音頭でもう一度乾杯しましょう」
「玉蓮姫、黄州でのお勤め頑張ってきてくださいね。では乾杯」
(改めて大人たちに言われるとやっぱり寂しくなっちゃうな)
と玉蓮は少ししんみりしてから果実水に口をつけた。
それを見ていた鳳珠が、玉蓮の頭を優しく撫でた。