第八章〜VS◯◯
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その日の帰りに教えられた料紙屋に行き、言われた通りに便条を見せると、奥から店主らしき年配の男性が出てきて、小部屋に案内された。
「本来は受けていないのですけれどね、こちらのご紹介でしたら特別に。お見受けしたところ官吏の方のようですが、彼の方の部下ですか?」
「いえ、直属の部下ではないのですが…」
「そうですか、彼の方がね…珍しいこともあるのですね。さて、どんなものにしましょうか?」
店主は、まだ少女というより子供に近い感じなのに官服を着ている時点で、誰か薄々予測はついていた。
(14、5歳ぐらいでこの前の国試に探花及第した官吏ー貴陽ではかなりの有名人だ)
と、その時のことを思い出す。
確か、その話をした時に、この便条の主は「あの親なら実力だろう」と言っていたか。
玉蓮はまず透かし模様にする図柄の相談をする。
丸い珠に入った蓮の花、と指定をした。
随分と直接的だとは思ったが、それ以外浮かばなかったのだ。
図案をいくつか書いてもらい、その中から選ぶ。
その後、この細工ができる紙の種類を聞き、色と共に選んでいった。
「一度に作る色は同じになりますが、この中からでしたら都度変えることもできますよ」
と言われた言葉に、次が楽しみだな、と思った。
今回は、官服に近い、薄い杏色の文をかけるような料紙にした。
出来上がりは取りに来るか、届けてもらえるというので、黄州に行く前には間に合わなさそうだったので、届けてもらうことにした。
邸と名を確認して、先ほどの思いが間違っていなかったことに満足そうに微笑んだ主人は、「計算をしてくるので少しお待ちください」と言って立ち上がった。
「あの…」と玉蓮は葵長官の名を出さずに「近いうちに寄る、とおっしゃってました」とだけ伝えた。
店主はわかりましたと答えて一度裏に下がった。
(直属の部下ではない、と言いつつ、この便条を寄越した、ということはよほど気に入られてるのですかね)
店主は心の中で主に話しかけてから
「随分と若いですし、ちょっとだけおまけして引いておいてあげましょうか、長いお客さんになりそうですし」
と呟いて、計算をしなおした。