第七章〜VS◯◯
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コツコツと足音をさせて、男は会堂に入ってきた。
王の前で跪拝する。
「お召しにより紅黎深、参上いたしました。お申し出のありました藍州州牧の職、謹んでお受けいたします」
「うむ、よろしく頼む」
劉輝の声にハッとし、なぜ紅黎深が‥と喧騒が戻ってきた。
「私がお願いしたんですよ」
絶妙な間合いの尚書令の一言に文句の声を上げようとした人たちが黙り込む。
「先の件は記憶に新しいところですけれどね、現時点で最適と考え依頼しました」
「しかしまた、仕事放棄など…」
「今度は大丈夫ですよ、まぁ、藍州州尹は苦労するかもしれませんが…」
悠舜の視線が春まで藍州州牧だった中書令の姜文仲に向かう。
「あいつなら、大丈夫だろう。新州牧ともうまくやっていけるはずだ」
悠舜が一つ頷いてから、「さて、紅春麗殿、こちらへ」と声をかけてきた。
それまで目を合わせなかった黎深が、春麗を見て途端に笑み崩れる。
(お、おじさま…)
(黎深、お前…)
同期の多い六部尚書侍郎全員が既視感のあるその表情に、(やはりまたか…)とガックリと疲労感を味わったのはいうまでもない。
ふぅ、と小さくため息をついてから、春麗は上官である魯尚書と、続いて戸部の上官二人と視線を合わせて小さく頷いてから、前に出て跪拝した。
「紅春麗、其方を黄州州尹に任ずる」
「謹んで、お受けいたします」
悠舜がほんの少し、口の端を上げたのを羽扇で隠してから言った。
「二人には近日中に任地に赴き引き継ぎを済ませた後、就任式を行うように。その後、現藍州州牧には茶州、黄州州牧には碧州にに速やかに行っていただく。茶州での引き継ぎは杜官吏がいるため州牧引き継ぎは行わず、距離もあるため櫂州牧には任命状が届いたのち、一週間で黄州に移動してもらいます」
またざわつき始めた様子を見て、めずらしく有無を言わさない様子で、悠舜が劉輝に向かって「それでよろしいですね、我が君」と促した、
「あぁそのように」
「では本日の朝議はこれで…」
「待て、余から一つ話がある」
黎深と春麗は顔を見合わせてから、再度礼をして自席に戻り、黎深は六部尚書の横に並んだ。
悠舜は何も聞いていない、と訝しそうにしたが表面上は取り繕っていた。
「一つ、上奏された法案があるが、皆の意見を聞きたい。姜中書令、あれを」
「はい」
と中書令から配られた書翰は、男性官吏の休暇ー配偶者が出産する場合の休暇制度に関するものだった。
「こちらの上奏者は、吏部の景玉蓮官吏と…葵御史大夫です」
文仲の一言は、王である劉輝と当事者の葵皇毅以外の高位高官たちは、水を打ったように静まり返ってのち、紅黎深電撃復帰以上の驚きを与えたのはいうまでもない。