第七章〜VS◯◯
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春麗が湯から上がってくると、鳳珠は自室でまだ仕事をしていた。
一度休ませるためにお湯に行ってもらってはいたが、今日は一日、あまり仕事にならなかったので仕方ない、と思いつつ、声をかける。
「先に休んでいろ、疲れただろう?」
手は動かしたまま、声だけ帰ってきた。
(・・・)
春麗は黙って室に入り、鳳珠の横に座ってから、腰に両腕を回した。
「ん、どうした?」
手をとめて春麗を見る鳳珠と目が合う。
フルフルと首を振って、そのまま頭を鳳珠の肩の辺りに乗せた。
鳳珠はその頭を軽く一と撫でしてから、「これが片付いたら終わりにするから待っていろ」と声をかけて、速度を上げて書翰の処理をした。
(真剣なお顔も素敵)
横からみていた春麗は少し顔を赤らめた。
毎日一緒にいるが、久しぶりに改まって見ると、やはり麗しい姿にどきっとする。
(黄州に行ってしまったら、こういう時間は取れない…)
その思いが、少しだけ春麗を暗くする。
官吏になってからずっとそばで支えてくれた存在がいなくなる、というだけでなく、鳳珠と離れることがこんなにも苦しいことだと、春麗は初めて気がついて、自然と視線が落ちた。
「本当は、行かせたくない」
視線の落ちてしまった春麗の小さな頭をそっと抱き寄せて、鳳珠がポツリと言った。
「しかも、できる限り早く、すぐに行かせなければならないなんて」
流れる髪を撫でながら、鳳珠は小さくため息をついた。
その様子に、春麗はキュッと鳳珠の衣を握りしめる。
「たかが2、3年。されど3年だ。春麗が隣にいない生活は、もはや私には考えられないようだ。私も黎深のように官吏をやめてしまおうか」
「それは…いけません、鳳珠様はきっと将来、宰相におなりになる…」
「いや、少し前ならともかく、今はそれはないだろう、悠舜がいる。補佐にそのうち柚梨をつける可能性は高いが、私はない。それに…いつかなるとしたら、春麗だ。そのための布石の黄州行きでもあるのだからな」
「・・・」
「二人きりでで過ごせる時間が短い、しばらくは柚梨には悪いが、春麗優先にさせてもらわないとな。全く、この私が随分と変わったものだ」
クスリと笑ってからイタズラそうな表情で春麗の額に口付けてから、さっと抱き上げて寝台へ向かった。