4000番メイ様へ
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「…んっ」
皇毅は身じろぎしてから目を開く。
「お目覚めになりましたか?」
「ん…あぁ…メイ…?」
ぼやっとした頭でぱちぱちと瞬きをして辺りを見回す。
あぁそうだ、今日は一週間ぶりの公休日で、帰ってくるなり顔を見たメイと家人たちから風呂に入れさせられて布団に押し込まれたのだった…とようやく思い出した。
「朝に帰ってきたが、今は…?」
「もう宵の口ですよ。随分お疲れのようでしたから、休んでいただきました。起きる少し前に、眉間に皺を寄せられていましたけれど、何か嫌な夢でも見たのですか?」
メイは皇毅の眉間を広げるようにそっと細い指を当てて、指摘してきた。
「あぁ…一年ほど前のことを、な…」
皇毅は身を起し、横に椅子を置いて座るメイの腰をとって、そのまま寝台に引き摺り込んだ。
「キャァっ」
「お前に、初めて会った時のことだ」
「御史台長官室でのことですか?」
メイがそのまま皇毅の横に座ると、皇毅はメイを抱えたまま体をずらして並んで横になった。
「まだお疲れですか?」
「いや…そうではない…その時は、こんなふうになると思わなかったな、と」
「まぁ」
笑いながらメイが少し伸びてきた皇毅の前髪にそっと手をかけて流した。
「ところでお前は、あの時に晏樹が用意したという服の下にもう一枚着込んでいたが、あれはどうしてだ?」
「旺季様が晏樹様に、私を御史台に入れるように指示されたのはあの時の話の通りです。元々、下に着込んでいたが旺季様に準備していただいた服だったんですよ。なのに晏樹様、なんかやたら張り切って色々用意して着飾らせて…”皇毅が喜ぶから”って仰るから、”旺季様から伺っている皇毅様はそんな方じゃないと思います”って言ったんですけどね」
メイは少し億劫そうな表情になった。
その様子を見て、皇毅の口の端がわずかに上がる。
もっとも、元々表情はほとんど変わらないのでメイは気づかなかったが。
「そうか…あの下に着ていたのは、旺季様が…」
天井を超え、遥か遠くの昊を思い浮かべて、目を閉じそうになったところを、ひょいとメイの顔が瞳に飛び込んできた。
「葵家の衣に近い色だから、これがいいだろう、って仰って」
(旺季様はきっとメイを気に入るとお見通しだった、ってわけか…)
皇毅は半分苦笑いのような表情でわずかに微笑んで瞳を閉じた。
次に見る夢は、もう少し甘い夢がいい、などと思いながら。
<おしまい>
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