黄家家人たちの内緒話
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「母様」
カタリ、と音がして、瑞蘭が室に入ってきた。
「随分灯を落としているのね」
「庭が明るいしね、それにこちらが見えるといけないと思って。それにしても、姫様の琵琶はさすがね。紅家のお家芸というだけあって」
「私たちも聴くのは初めてなんですよ。先ほどの私たちの説明が悪かったせいか、母様が姫様のことを随分お転婆だと思っている、と御館様にお伝えしたら、琵琶を、となって。でもつい昨日、邸に持って帰られたところで、姫様が琵琶が得意とは知らなかったんです。黄州記が聴こえてきたときは、家人たちもとてもよろこんでいたわ。」
程なくして曲が終わった。
庭院に目を向けると、楽器を置いた春麗を鳳珠がひょいともち上げて、膝の上に乗せていた。
「あらあら坊っちゃまったら」
「あの様子だと、今日はもうお仕事はされないわね。いつもは毎日寝るまで仕事なのよ、ご夫婦揃って。でも基本的に御館様は姫様をああやって甘やかして構うのがお好きだし、姫様も嬉しそうにされているから、夫婦仲は誰も心配していないんだけど」
鳳珠が菓子を春麗の口に入れて食べさせているのが見えた。
「今日は母様が持ってきてくださった黄州のお菓子詰め合わせからいくつか選んでお出ししておきました。今頃、御館様が黄州のお菓子について説明していると思いますわ。姫様、元から采はお得意みたいですけれど、黄州の采や菓子も教えてほしい、って時々庖厨に来られてますから、初めてのものがあると、いつも御館様が解説しているんです。」
「へぇ、そうなの」
「ご婚姻の前ですけれど、御館様と姫様が遠出するときに、お弁当を作られてね、姫様、同行の家人たちの分まで作ってくださったのよ。とても美味しかったんですって。どんなに羨ましかったか!」
瑞蘭は思い出して悔しそうな顔をする
(家令の話もだし、今の瑞蘭の話からすると、本当に姫様は家人たちにも歓迎されているし人気があるのね、いいことだわ)
華蘭は様子を見ながら分析をする。
外に目をやると、イチャイチャしている二人が目に入った。
「ねぇ瑞蘭、あれもいつもの様子、なの?」
「あら。そうねぇ、室の中でのことはわかりませんけれど、たまに庭院でもあんなふうにしているところを見ることはあるわ。最も、お二人が庭に出られているときは、家人は誰も近寄りませんし、お戻りになるまで、たまに様子を伺うことはあっても、邪魔はしないというのが鉄則ですからね」
「あの様子なら、すぐにでもお子ができそうだけどね」
「母様。それは文にも書いた通り、御館様から禁止されているので言ってはだめですよ。しばらくあぁいう風に過ごしたいんですって。思うに、一緒にお仕事もされているし、住むところも同じだったからお互いのことはよくご存知けれど、婚姻は急に決まってしまったから、お二人で楽しむ時間がなかったので、それをゆっくりと楽しんでいらっしゃるのだと思うわ
」
「ふぅん、そんなものなのかしらね…」
(坊っちゃまがようやく結婚してくれたから、行き遅れの瑞蘭のことも考えなくちゃね・・・)
華蘭は瑞蘭を見て、心の中でため息をついた。