黄家家人たちの内緒話
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ちょうど陽が落ちたぐらいの時間の珍しく早い時間に、俥が貴陽黄家別邸の前に止まった。
邸の主人が優雅な仕草で降りてから、身体の向きを変えて手を差し伸べた。
その手にそっと小さな手を載せて、春麗が降りてきた。
「鳳珠様、ありがとうございます」
いつものようにお礼を伝えてにっこりと微笑む。
あぁ、と頷いてからそのまま手をとって邸の中へ入るべく歩き始めた。
「おかえりなさいませ」
家令、侍女頭、数人の家人たちが迎えに出て頭を下げる。
「ただいま」
「ただいま戻りました」
二人が声を揃えていうのも、いつものことだ。
だがそう言ってから、春麗は足を止めた。
振り返って、門に近い植え込みをじっと見つめる。
「どうした?」
鳳珠は足を止め、春麗の様子を見てからその視線の先を追った。
「…いえ…いつもと違う気配がしたものですから、つい…ただ…」
春麗は首を不思議そうに傾げてから
「きっと、気のせいですわ、ごめんなさい」
と伝えて、中に入るよう促した。
鳳珠は念の為、とすぐに家人に指示をしてから邸に入っていった。
「あの植え込みの中、母様ですね。完全に、姫様に誰かいるってバレましたわね…」
「だな…」
家令と瑞蘭はため息をついて、「わたしが対応しよう。御館様にも伝えておく」と植え込みに向かった家令を見送ってから、瑞蘭は春麗の世話をするべく中に入っていった。
鳳珠の着替えを手伝ってから春麗が瑞蘭と自室に移った頃を見計らって、家令が室の外から声を掛ける。
中に入り、瑞蘭の母が来ていることと、先ほど、春麗が気がついた植え込みに潜んでいたことを伝えた。
「なんで華蘭が貴陽に来ているんだ?」
「用があったのと、姫様を見に来た、と。大旦那様たちより前に会うつもりはない、と言っていましたが、あの様子で姫様が気がついてしまいましたから、ここは正直にお伝えしないと、姫様が不安に思うかもしれない、と思いまして…」
はぁ、と鳳珠はため息をついた。
「まぁ、帰っていないし、来なくていいと言ってしまった手前、父上たちに派遣されたのかもしれないな…食事の前に、華蘭に会おう。頼んだ」
と家令に指示を出して、立ち上がって春麗の室に言って声をかける。
「瑞蘭、ちょっと」
「はい?」
二、三耳打ちされた瑞蘭は「かしこまりました」と頭を下げてから室に戻った。
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