Rayお礼SS
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※藍より深い碧の大地−1
5ページ続話…今回は黄州の実家話です
「御館様、奥方様、貴陽の御館様より御文が」
御館様、と呼ばれた初老の男は、ふむ、と言いながら渡された文をぱらりと開く。
「!!!」
ガタッと立ち上がり、呆然と文を見ること鐘三つ分。
「どうなさったのですか?」
奥方様、と呼ばれた女は、固まる夫の手から、そっと文を抜き取り読み始める。
「あ、あなた…これ…」
「あ、あぁ…」
二人はなんとも言えない表情で顔を見合わせ、しばし呆然と立ち尽くした。
その様子を見た家令は、何か良からぬことが起こったのではないかと不安になり、自分宛に一緒に届いた貴陽にいる娘からの文を広げ読み始めた。
”父様、母様。鳳珠様のご婚姻が決まりました。お相手は以前文に書いた、紅家直系の姫です。御館様のお顔に動じることなく、官吏としてのお仕事もしっかりなさった上に、御館様のお手伝いをしたり、私たち使用人にも心遣いいただける素晴らしい姫様です。貴陽の使用人一同、御館様のお相手には姫様しかいないと考えておりましたので、大変嬉しく思っています。御館様の意向で、当面はお二人で楽しまれるということだから、お子様が、とか余計なことは言わないでくださいね。…”
呆然と隣にいる侍女頭である妻に文を渡してから、もう一通、貴陽の家令から同時に届いた文もガサガサと開いて読む。
”瑞蘭からも報告が入っていると思うが、鳳珠様が婚姻を決められた。相手は紅家当主の兄、紅邵可殿の息女だ。春から邸にいる話は聞いているだろうが、我々にも心遣いできる姫様なので心配はない。御館様の顔への耐性もしっかりあるし、姫様自身が大変奥ゆかしい方なので何も心配することはないだろう。御館様も姫様も仕事が忙しいのと、紅家の事情で式はいずれ、ということになっているが、手続きだけ先に済ませたいとの意向なので、準備についてはこちらで万端なく行う。”
「お、御館様、奥方様、この度はおめでとうございます」
動揺を隠しきれていなかったが、家令と侍女頭の夫婦はなんとか膝をつき、祝いの言葉を述べる
「あ、ああ…ありがとう」
「あなた…これ、私たちどうしたらいいのかしら?」
「鳳珠が帰ってこれないから籍だけ入れるが特に貴陽に出てこなくていい、と書かれてしまっている以上、すぐに行くのは難しいだろうな…」
「そうですね、紅家直系の姫だと、中途半端な式では紅家が許さないでしょうし…何か事情があるようね?向こうに確認しておいてくれないかしら?」
「かしこまりました、奥方様」
嬉しい報告のはずなのだが、なんとなく重い空気があたりを支配した。
「それにしても…あの鳳珠の顔がなんともない、というのもすごいものだな。我が息子ながらたまに会うと戸惑うことがあるというのに」
御館様ー鳳珠の父は感心したようにため息をついて、椅子にどっかと座った。
「本当に…どんな姫なんでしょうね?官吏やっているというし…」
両親はまだ見ぬ息子の嫁について、あれこれと話し合った。
「とりあえず…向こうの家令と瑞蘭に返事を書かねばな」
「瑞蘭には私が書きますわ」
黄州の家令夫妻はそれぞれ料紙を取り出して書き始めた。
ややあって、書き上げたものを互いに交換してみる。
一行目は
”鳳珠様の婚姻が決まったのは何よりだが…一体どんな姫様なのか?”
と全く同じ文章で二人は吹き出して笑った。
「やっぱり、気になるよなぁ?」
「えぇ、とても…奥方様は官吏をされていることにあまりいい表情をされていなかったのが気になりますね」
「でも、今まで来ていた瑞蘭の文からすると、初の女人官吏の一人で状元及第、吏部、戸部、王の補佐をした上に羽林軍指南までやっているという文武両道の姫様ということだろう?」
「それに采や刺繍もできるようですし、なんだかすごい姫様ですね」
「お前が文で姫様についての人となりは聞いてくれていると思ったから、私の方は実務的なことだけ書いておいて正解だったよ。だが瑞蘭があれほど好意的に書いているということは、心配しなくていいらしいな」
「御館様も奥方様もあちらに行かないようだったら、私が様子を見てこようかしら?」
半分好奇心、半分坊っちゃまへの心配、というような顔をして、侍女頭は計画を立て始めた
2021.12.23〜
いつもありがとうございます