甘い時間
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「残業ばかりしている春麗のために」と黄州の母が黄州でしか買えないと言って送ってくれた綺麗な瓶に入ったりんご味の飴も、残り1つになった。
似たような物は貴陽にもあるが、特殊な製法で作っているこの飴は、黄州以外では販売しないことになっている。もちろん、黄家の系列の店である。
瓶は戸部尚書室の机案の上で鎮座している。瓶の中で黄金色の飴がキラリと光った気がした。
春麗はチラチラと時々、その瓶を…いや、瓶の中の飴に視線を送っているのに、鳳珠は気が付いていた。
(さて…)
仮面の下で悪戯そうに口の端を上げると、徐に仮面を外した。
「!?」
春麗が少し驚いて斜め前の自分の席から鳳珠の横顔を眺める。
それを目の端で認めた鳳珠は、長い指で瓶の蓋を開け、黄金色の飴を摘んで自分の口に入れて満足そうに舐め始めた。
「…!」
春麗は声に出さないものの、明らかにムゥと不機嫌そうに口をへの字に曲げた。
(欲しかったのに…鳳珠様の意地悪!)
プイッとした表情で筆をとり、書翰に視線を落とした。
鳳珠は楽しそうにその様子を見てから、「春麗、おいで」と声をかけた。
条件反射で春麗が顔をあげたので、両腕を広げる。
「まだお仕事です!」と横を向いてしまったが、もう一度「春麗」と声をかける。
「今日はもう誰もいない」
「…」
ムゥとした顔のまま、春麗は立ち上がって鳳珠の近くまで行くと、腕を伸ばして引き寄せられ膝の上に乗せられた。
そのまま長い指で顎を掬われて、鳳珠の唇が降ってくる。
「ん、ちょ…」
ちょっと鳳珠様、の声はりんご味の甘い舌で絡め取られた。
鳳珠はわざとクチュリと音を立てるように舌を味わってから、コロン、と飴を春麗の口の中に落とした。
瞳を閉じていた春麗が、パチパチと瞬きをしたのを見て、鳳珠は唇を離すと、満足げな笑みを浮かべた。
〜飴玉を口移し
仲良しな二人にやってほしいあまい10題
「腹を空かせた夢喰い」様より