黄家お宅訪問
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噂に聞いていた男は、確かに戦の爪痕が残る顔をしていた。
だがそれでも
(やはり黄家の方ね)
鳳珠や鳳珠の父親ほどではないが、傷があっても美男は美男である。
(藍将軍とか龍蓮殿や黎深叔父様も綺麗な顔をしていると思ったけど、黄家の方は一段違うわね)
が春麗の第一印象である。
とはいえ”戦商人”の名の通り、よく言えば精悍な、悪く言えば影のある顔をしていた。
「鳳珠は…いや、黄家としてもいい嫁をもらったな」
「ですが、黄家の道具にするつもりはありません」
(あら、鳳珠様が交戦的…)
春麗はちらりと鳳珠を見る。
「ははっ、お前の惚れ込み具合は噂で聞いていたが、すぐに言われるとはな。心配するな、俺も道具にするつもりはないよ」
笑いながら黄家当主は「まぁ座れ、その嫁と話してみたかったんだ」と椅子を促した。
「今のところ、其方のいう”持続可能な商売”とやらはできている。大きく跳ねることもないが、堅調だし、平和なためか僅かに右肩上がりだ」
「それはよかったです」
「単刀直入に商売のために聞くが、これから伸びるのはどこだと思う?」
「それはわたくしよりも、ご当主様や鳳珠様の方がお詳しいと思いますが…」
「お前の意見を聞きたい。黄家の人間なら、判をついたように同じ答えしか出せないだろうからな」
当主はニヤリと笑った。
春麗が鳳珠をみると頷いたので、「素人の意見で恐縮ですが…」と口をひらく。
「碧州については言わずもがな、復興関係でしばらく伸びると思います。純粋に、ということであれば、茶州、黒州、白州、それから、黄州の4つですわ」
「ほぅ、
当主が面白そうに片眉を上げた。
隣を見たら、鳳珠が同じような表情をしていて、春麗は少しだけ笑った。
「・・・世の中が安定すれば人の動きが出る。その時に、大きな産業のない黄州が何をするか、というところにかかってくるということか」
「そうです」
春麗が自分の意見を述べた後、黄家当主は言葉を置き換えて繰り返した。
(一応、黄州のことは瑞蘭に随分聞いたり書を読んだりして学んではいるけれど、実際に見るのとはまた違うからこれ以上の深入りはやめておくべきね)
春麗は少し考えてから、「わたくしが今申し上げられるのはこのぐらいです」、と話を打ち切った。
「わかった。詳しい話はまた式の後にでも話そう。あぁ、これから紅家当主が来るらしい。鳳珠のところに挨拶に行った後と聞いているから、そろそろ帰ったほうがいいだろう」
という一言で、初めての当主との面会は終了した。