黄家お宅訪問
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「おいで」
誰かに会うといけないから、と念の為仮面をつけた鳳珠は春麗の手をとって庭におり、散策を始めた。
主人不在の庭でも綺麗に手入れされているあたり、さすが黄家直系だと春麗は貴陽の邵可邸(実家)と比較して感心する。
「ふむ…昔はもう少し低い木だったと思ったが、さすがにだいぶ伸びているな」
「まぁ。でも15年ぐらい帰られていないのでしょう?でしたらさすがにお手入れされていてもそれなりに大きくなっていると思いすわ」
貴陽黄家別邸の庭と似てはいるが少し趣の異なるそれに、春麗はおもしろそうに視線を向けている。
「貴陽ではあまり庭に出る時間もないと言ったら、庭師が張り切って春麗のための花壇を作ったと聞いていたのだが…」
そう言いながら歩いていたが、「あら、この扉は?」と春麗木戸に目を向けた。
「あぁ、これは…」
鳳珠がぽん、と軽く押したら簡単に木戸は開いた。
開いた先も庭院である。
「ここは?」
「隣の邸の庭、だ。歩いてみよう」
「えっ?黄家のどなたかのお邸ですか?」
「いや、違う」
悪戯そうに鳳珠は微笑んでいる。
「違う、って…勝手にいいんですか…?だめですよね?」
「あぁ、普通はダメだろうな。だが、私は大丈夫だ」
言われた意味がよくわからない、と春麗は首を傾げたが、鳳珠に促されて先に隣の庭に足を踏み入れた。
少し落ち着きなく、キョロキョロと辺りを見回す。
「こちらのお庭の方は似ている感じはしますが幾分落ち着いた感じがしますわね」
鳳珠に手を取られながら、春麗は少しドキドキしながらついていく。
いくら大丈夫と言われても、他人様のお庭なのだ。
「そうだな…この庭を作った時のここの主の趣味のままのようだな」
懐かしそうに遠くを見つめて、鳳珠は目を細めた。
「その方のことは鳳珠様はご存知なのですね」
「あぁ…まだ私が小さかった頃のことだな…だがその方のことは、春麗も知っている」
「エェッ?」
春麗は驚いた勢いで少し大きな声を出してしまい、咄嗟に口元を手で覆った。
その声に気が付いたのか、一人の男が「誰だ!」と叫びながら奥から出てきた。
「お前たちは誰だ、どうやってここに入った?」
庭師と見られる老人は少し距離をとっているが、不審者発見とばかりに身構えている。
「・・・もしかして、爺か?」
「誰じゃお前は、仮面なんぞ被って不信感しかないわっ!」
見るからに相当年配だが、ガルル、とこちらに飛びかかってきそうな庭師の戦闘体制に「え、と…」と春麗は小さな声を発した。
「爺、私が誰かわからぬか?」
徐に鳳珠が仮面を外した。
「えっ?」と驚くのは春麗の方だ。
少なくとも貴陽では、知っている人たちの間でもほとんど積極的に仮面を外さない鳳珠が、だ。
しばらく顔を見つめてから、ハッとして庭師の方を見る。
「・・・」
「あぁ、鳳珠様、だから…」
言いかけた春麗を遮ったのは、庭師の声だった。
「もしかして、坊っちゃまですか?」