黄家お宅訪問
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鳳珠の室がある離れは、全てそこだけで完結できるようになっていた。
とはいえ、流石に今回は一緒に食事を、ということで本邸に移動して食事をする。
聞いたところ、やはり鳳珠の美貌のために邸内でも度々被害が出るため、うろうろしなくて済むように離れを作ったらしい。
ちなみに、”姉の離れ”もあるらしいが、そこは全て改装して客室として使っているとのことだった。
鳳珠の両親にしてみれば、”あの息子と結婚してくれた!”というだけで春麗には何の不満もないようで、鳳珠が引くほどに娘のように可愛がられていた。
紅家当主の娘、になってしまったことによる政略的なことも何も気にしていないようでーそもそもそういうことに興味がないと言った方が正しかったー、ただし、鳳珠が次期当主になる可能性があることだけは伝えられた。
今日は疲れただろうから、と早めに離れに戻された二人は、順に寝る支度をしていった。
ふぅ、とお湯の中でため息をついた春麗はお湯に浮かぶ花と香りのいいお湯に浸かっていた。
(今日は色々話がありすぎて…情報量が多すぎる…)
それを見越して瑞蘭が用意したのだろう、お花は先日の宿での美容の時に気に入ったのを華蘭が瑞蘭に伝えたようだ、と推察しながらもう一度ため息をついた。
(お義父様もお義母様も想像していたよりとてもお優しかった…紅家とは色々あったから本当は敬遠されているかと思っていたけれど、そうでもなかったみたいだし、官吏として働いていることも好意的に受け止めていただいたようだし…きっと、鳳珠様がたくさん御文で伝えてくださっていたのね)
鳳珠だけでなく、瑞蘭や家令からも何度も文が出されていることを、春麗は知らない。
(それから鳳珠様のお姉様のこと…何かありそうね。でも、敢えて黄家の方達が深追いしていない、ということは関わることはいいことではない、と…)
一瞬、千里眼を使おうかとも思ったが、会ったことのない人なので、仮に何か見えたとしてその人が本人という確証がない。
もっとも、鳳珠一家の美形ぶりからすれば、分かりそうだとは思ったが、
「気になるけど…やはり追うのは得策ではないわね」
小さく呟いてから、頭から追い出すように首をふるふると振って湯船を出た。
「鳳珠様、まだ起きていらっしゃいますか?」
小さく声をかけてから、春麗は少しだけ鳳珠の室の扉を開いて覗き込んだ。
鳳珠は寝台から起き上がって扉の前にきて開ける。
「どうした?」
「あの…」
手にしていた燭台をキュッと握って下を向いてしまった春麗に、鳳珠はクスリと笑ってから、「おいで」と手をとって室内に誘った。
「ごめんなさい、立派なお室を用意していただいたのですけれど…」
春麗から燭台をとって机案の上においてから、そのまま寝台までいき、ひょいと春麗を抱き上げて横にしてから隣に寝転んだ。
「寂しかった、か?」
鳳珠が綺麗な指先で前髪をそっと撫でる。
こくんと頷いた春麗に、「私もだ」と言ってから額に口付けた。
「式までは絶対にダメだと言われているからな…だが、かつてはいつも一人だった私の室に、春麗がいてくれて嬉しい」
春麗はそっと鳳珠に抱きついた。
「明日は…鳳珠様のお庭を見せてくださいますか?」
「あぁ、もう庭師に任せっきりでほったらかしだが、それでもよければ」
「嬉しいです」
ひとりぼっちだったという鳳珠の少年時代の思い出に、少しずつ誰かとの思い出が増えてほしい、その中に自分が入っていたらどんなに幸せか、と春麗は思いながら、鳳珠の腕の中で瞳を閉じた。