黄家お宅訪問
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そこからまただいぶ歩いて着いた離れは、そこそこの広さのあるものだった。
瑞蘭が先に春麗の室を案内した。
「このお室…」
「調度品は私が指定したからな。こちらにくると普段会わない人も多いから疲れるかと思って、あまり貴陽の室と変わらないが、近い造りにした」
「いいえ、ありがとうございます」
あまり変わらないことに安心していた春麗は、少し驚いた顔をしてから、にっこりと鳳珠に微笑んだ。
瑞蘭は簡単に説明した後、尋ねた。
「持ってきた荷物はこちらに運んであります。貴陽とは違ってこちらの離れは室の中にお衣装部屋がありますから、お着替えできますよ。いかがですか?」
「いや…食事までまだ間があるから、このままでいいだろう。私の室は隣だ、案内しよう」
すぐ隣の鳳珠の室に移動する。
「ここが、鳳珠様の、お室…」
(貴陽のお邸の室よりずっと広い!)
「御館様のお衣装もあちらに入れておきましたので、お着替えの際はあちらからお願いします。お茶をお持ちしましょうか?」
鳳珠が頷き、瑞蘭は控えていた貴陽の邸の侍女から湯と茶器を受け取り、手早く茶を淹れた。
「今日は君山銀針です。あとはお願いしますね」
小菓子も置いて、さっと出ていく。
春麗がまだ少しキョロキョロとしている様子をクスリと笑って見てから、鳳珠は椅子に促して隣に座った。
「この室で…誰かと茶をする日が来るとはな」
「・・・」
(もしかしたら鳳珠様はお顔のこともあって、お室に引きこもって暮らしていらしたのかしら?だとしたらとても寂しいこと…)
春麗の表情が少し曇ったのを見て、鳳珠は話し始めた。
「想像の通りだ。幼き頃は外に出れば誘拐されそうになり、少年時代はどこぞの金持ちから稚児に欲しいだとかよくわからない男や女が見惚れてゾロゾロ着いてくる。あまりの面倒さに邸にこもって室と庭の往復だった。気功を習得したのも外に出た時の護身用だ。そんなわけで、黄州に関しては友と呼べる人もいないし、思い出もほとんどない」
春麗は少年時代の鳳珠に想いを馳せて、視線を落とした。
「あぁ、だがたまには外には出ていたぞ。そうだ」
鳳珠は立ち上がって、書棚から箱を一つ持ってきた。
「いつだったか、帰ってきたら春麗に見せたいと思っていた。私がずいぶん昔に描いた絵だ。外に出るときは家人がついて、顔は布で隠して出ていたので問題はなかった。いわゆる、黄州の観光名所というやつだ」
銀杏に染まる山や清流、それから街中の景色は、多分どこかの店の二階の窓から見えた景色を描いたものだろう。
それから、庭の草花を模写したものもある。
(これは…)
春麗は、そこに収められている類の中では明らかに異質な一枚の絵に目をとめた