新婚旅行
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全て終わり、着替えて髪を結ってもらった後、女性について広間に出ると、綾衣をつけた鳳珠が待っていた。
「鳳珠様?」
「・・・!」
鳳珠の視線は自分ではなく、前を歩く施術してくれた女性に注がれていた。
(?)
「か、らん…?なぜ?」
「坊っちゃま、お久しぶりです」
からん、と呼ばれた女性は鳳珠に向かってしっかりお辞儀をした後、「若奥様、こちらへ」と春麗に鳳珠の横の椅子をすすめた。
「華蘭、どうしてここへ?」
「瑞蘭が戻ってきてから入れ違いでこちらへ。美容の件を入れたのも瑞蘭から”御館様のことですから、おそらく式の前ということはお構いなしで、姫様が少しお疲れの頃だと思いますのでよろしく”と頼まれました」
こてん、と首を傾げた春麗に対し、鳳珠は額に手を当ててはぁ、とため息をついた。
「それで?」
「あれほど瑞蘭がお伝えしたにもかかわらず、ですね、坊っちゃま。若奥様は少しお疲れのようでしたので、今日からは夜の睦言は控えていただきたです」
「なっ」
鳳珠は流石に答えに詰まり、変な声を出した。
(え?お疲れ、ってそういうことだったの??)
ボン!と赤くなった春麗は袖で顔を隠してしまった。
「華蘭、言い方気をつけろ。春麗がびっくりしているだろう?瑞蘭から言われてこなかったのか?」
「言われましたけど、坊っちゃまにははっきり言わないと伝わらない、とも言われましたよ」
「ったく…」
鳳珠ははぁ、と大きくため息をついた。
「若奥様、ご挨拶が遅くなり申し訳ございません。私、黄州の邸の侍女頭をつとめております、華蘭と申します」
「瑞蘭の母だ」
春麗はパッと隠していた手を払い慌てて立ち上がり、春麗です、よろしくお願いいたします、と挨拶をした。
(どうりで、手つきが瑞蘭とよく似ていたわけですわ。お顔はそんなに似ているとは思いませんけれど…)
「姫様は…」
少し値踏みするような視線に、春麗の緊張が走る。
「武芸も嗜むと伺ってましたが、思った以上に華奢でいらっしゃいますわね」
「そう、ですか?」
「ふむ、そうかもしれないな。十三姫はもう少しがっしりしていただろう?」
「でも…」
(珠翠も華奢だし、こんなものかと思ってましたわ)
よくわからない、というふうに少し首を傾げた様子に、鳳珠が軽く微笑んだ。
「まぁ、座ったらどうだ?」
「そうなさってください。こちらのお茶をどうぞ」
少し甘い果実のお茶に、春麗は少し緊張が解けたのか、ほぅ、と息をついた。
「えぇ。以前、貴陽の邸でお見かけした時にそう伺いました」
「えっ?いらしていたのですか?」
「はい、坊っちゃまがあっという間に婚姻を決められて、貴陽別邸の家令も瑞蘭もベタ褒めの姫様の様子が気になる、ということで私が代表して、こっそり拝見しました」
(いつのことだったのかしら・・・?もしかして、いつだったか感じたあの気配?)
粗相はしていないと思うが、こっそり見られていたというのも気になる。
春麗は別の意味で少し頭が痛くなった。