新婚旅行
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持ってきてもらった荷物を解いたりこの辺りの地図を見ているうちにあっという間に時刻は過ぎたらしく、夕食を持ってこられた。
店のように順次提供というわけではないが、食卓に設えて、係りの者たちは立ち去った。
「随分と手際がいいものですわね」
「あぁ。まだ試験運用の時期と聞いているが、かなりきちんと躾けられている」
少しだけ飲もう、と鳳珠が頼んだのは春麗の好きな辛口でキレのいい酒だったが、それを注ごうとした春麗を止めた。
「はじめに一口だけこれだ。何かわかるか?」
黄色というより茶色に近いそれは、とても甘い香りがした
「果実水みたいに甘く感じるだろうが、酒だ」
鳳珠の言葉に、春麗は少し首を傾げてから口をつけた。
「少し…発泡してますけれど大丈夫かしら?」
「あぁ、問題ない。そういうものだ」
「とっても甘いですが、嫌な甘さではありませんわ。でもこういうのは初めていただきます」
鳳珠は少し笑ってから、「何か当ててみろ」と言ったが、春麗はわからないと首を振った。
「私はさっき、手がかりを少し出したが、それに春麗が気づかないというのも珍しいな」
鳳珠が少し意地悪そうに言った。
春麗は唇を少し尖らせて「だって…」と言ってからもう一度玻璃の盃に口をつける。
「果物ですか?梨…にしては甘いから、りんご?」
「あぁ。黄州で作られているりんごの果実酒だ」
「初めていただきましたわ」
「まだ量産していないらしいのだがな、黄州名物として売り出そうとして、貴族の婦女向けに作っているらしい。さっき
「鳳珠様もやっぱりお商売のことはお詳しいのですわね。わたくし、全然わからないからお勉強しないと…」
春麗は少し表情を曇らせて、視線を落とした。
嫁いだ時にいつかは手伝ってもらうこともあるかもしれないと言われていたものの、宮城の状況も落ち着かないこともあり、当面は官吏優先でということで何もしていないことに、心のどこかで引っかかっていたのを思い出した。
「そうか?でもよく凜姫と百合姫とやりとりしているだろう?悠舜が、春麗は商才があると凜姫が誉めていたと言っていたぞ」
「そうなんですか?」
ほんの少しだけ春麗の視線が上がったのを見て、鳳珠は少し安堵した。
「あぁ、詳しいことは聞いていないが、春麗の一言がきっかけで凛姫の商売がうまくいったのがいくつかあるようだと言っていたから、間違いない。ちなみにその林檎酒は、去年豊作すぎて値段が下がってしまうから酒にして日持ちをさせてはどうか、と実験的に作ったらうまくいったものらしい」
「面白いですわね。このお酒だと…お魚とか、もしくは甘辛く焼いたお肉なんかも合うかしら?」
「ふむ…今日は春麗好みの辛口の酒に合わせた料理を頼んでしまったから、明日の夜、魚か肉で試してみるか。だが黄州は海のものは取れないのが問題だな…」
「川とか湖で取れるもので何が合うか聞いてみましょうか。淡白な白身が合うと思いますわ」
「あぁ、いいかもしれないな。春麗は料理の才もあるからな、私では思いつかないような発想が次々浮かぶのが不思議だ。宿の者も喜ぶだろう」
「まぁ」
くすくすと笑いながら、二人は普段とは異なる食事を楽しんだ。