新婚旅行
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1日目は普通の宿だ、と言われたが、それでもある程度きちんとした宿ではあった。
ここも黄家の系列だという。
夕餉をとりながら春麗が質問をした。
「今日は馬車で途中で景色を見たりしながらゆっくりきましたけれど、もし馬で来たらどのぐらいかかるんですか?」
「馬か…武官が全速力で馬で走ったら半日は越えるくらいだろうな」
「そう考えると、やはり黄州は近いのですね?」
「明日逗留するところまで、馬なら夜駆けしても一日では難しいが1日半なら、という距離だな」
「そんなに近いのに、一度も帰られなかったのですか?」
言われた鳳珠は少し驚いた顔をしてから、そうだな…と続けた。
「前の戸部尚書の不正などもあって国庫はすっからかん。そんな時に戸部尚書になって、その立て直しで毎日が精一杯で、帰るという選択肢はなかった。柚梨の婚姻の時はなんとか休ませたが、その時しか帰らせる時間もなかった。さらに王位争いだ。そんなこんなで自分がなにも用事がないのに帰る、ということは考えもつかなかった」
「そう、なんですね…」
(鳳珠様は真面目だから、やはりお仕事最優先になってしまったのかしら…同じ帰らないでも黎深叔父様とは随分理由が異なる…)
「だから、今回は春麗を連れて帰る、といういい機会になった。邵可殿から言っていただかなかったら、私はまた仕事を理由に、春麗に花嫁衣裳を着せることもしない愚かな夫になるところだったよ」
少し自嘲気味に綺麗な顔を曇らせた。
そんなこと、と春麗は首を振る。
「
その時の会話を思い出しながら鳳珠は言った。
他にも色々あったが、今すぐに話すことでもないだろう、と一度そこで区切る。
「まぁ…そうだったんですね」
「知らなかったのか?」
「父は当時、ほとんど紅家を出た身でしたから、そんなこともあろうかとは思っていましたけど…確かに、紅家の、黎深叔父様にすら言わずにいきなり私たちも連れて帰ったから、初めの頃、叔父様は母様に敵意剥き出しでしたね…母様の方が一枚上手で、わたくしと秀麗をダシに、叔父様たちを黙らせましたけど」
(まぁ母様の正体を考えたら、普通の結婚式はないわね…父様の立場だからできたというか…)
春麗は少しだけ思考に入る。
式だけが全てとは思わないが、一応貴族の娘だから、というのはあるのかもしれない、と思い微笑んでおいた。
それよりも、ついに鳳珠の両親と対面、ということで、そちらの方がよっぽど緊張はしていた。