二人だけの秘密
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春麗の持つ荷物を、「着いてからはなしますわ」と言われた鳳珠は、春麗を先に馬に乗せてから、自分がまたがった。
馬の腰には小さいが掃除道具と庭院で選んだ花もついている。
急ぐ用でもないからゆっくりと景色を見ながら山を登っていく。
今日の鳳珠は仮面ではなく綾衣を巻いているので、目元が出ているので春麗はニコニコしながらその表情を時折眺めていた。
着いてみると、まだ思ったほど草は生えていなかった。
「春麗の言っていた通り、そこまでひどくなっていないな」
「えぇ、多分、父様が定期的に来ているはずだからそんなに草ぼうぼうではないと思っていたんですけど、やっぱり来ていたみたいですね。これぐらいならわたくし一人で大丈夫ですから、鳳珠様は休んでいてください」
「いや…春麗の母上だろう?であれば私にとっても母上だから、な。何もしないと叱られてしまう」
クスッと笑いながら鳳珠は綾衣を取り、しゃがみ込んで草を引っこ抜いた。
程なく綺麗になってから、二人で揃って手を合わせる。
(母様…やっぱり素敵な旦那様でしょ?わたくしは今、自分の人生を歩いていると実感していますわ。鳳珠様の横を歩くことが、わたくしの人生です)
さぁっと柔らかいかぜが吹いた。
「鳳珠様、そこに敷き布を敷いていただけますか?」
持ってきた籠から布を渡し、春麗は水筒と茶器を出してお茶を注いだ。
「今日は、これを持ってきたんです」
と馬の上でずっと抱えていた包みを開いた。
「二胡か?」
「えぇ…実は、母様が教えてくれたんですけれど、家では”二胡は秀麗のもの”となってしまったので、わたくしは弾かないことにしたんです。代わりに、黎深叔父様に琵琶を習いましたけど…だから、わたくしが二胡を弾くときは、母様のお墓の前で、たった一人の時だけ、と決めていて」
「私がいるのに、いいのか?」
「鳳珠様だから、です。他の方の前では弾きません。拙いですけれど、聞いていただけます?」
「あぁもちろん、喜んで。曲は?」
その言葉にふんわりと笑った春麗は、「母様の曲で」とだけ答えて、弾き始めた。