わからないこと
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「ほぅ」
甘い柚子茶を一口飲んで、美味しそうに黎深はため息をついた。
「それで、本日の用はなんです?」
悠舜の二度目の問いに、黎深は手元の茶器の中を見た。
今まさに頭に浮かんでいる男の衣と同じ色だった。
「鳳珠は…あんなじゃなかっただろう?どうして春麗に対してはあぁなんだ?」
「・・・」
悠舜はなんとなく黎深が言いたいことは察した。
あの顔ゆえに、恋愛もほぼしたことがない鳳珠が、百合に惚れたときはまさに猪突猛進、さらに真面目さと純粋さに拍車がかかり、実家の財力もあることから金に糸目はつけず爆走だった。
が、春麗については、経緯は詳しく聞いていないが、どちらかというと色々考えて動いた節が強い。
それも少し聞いた話では、黎深も一枚噛んでいたということだったが…
そのことが今更ながらに気になったのか…?と見立てたが、考えを言う前に
「どういう、ことです?」
と黎深に尋ね返した。
「百合の時と、違う」
「そりゃ、百合姫と春麗姫は別人ですからね。顔だって似ていませんし、性格だって違う」
「だが、鳳珠は百合が好きだっただろう?」
「えぇ。振られた後、あなたの意地悪な文を百合姫からのものと信じて思い悩んで、仮面をかぶってしまうほどには、ね」
(全く、あなたのせいで)
と重ねて言おうとして、ここでいうのは得策ではないと、悠舜は柚子茶と共に言葉を飲み込んだ。
「鳳珠は、春麗のことは好きではないのではないか?悠舜だって、私には百合にきちんと気持ちを伝えろだの愛しているだのと言えと言ったが、鳳珠には言わなかっただろう?」
「へ??」
我ながら大層間抜けな声が出たものだ、と悠舜は妙に冷静に分析した。
(いやちょっと黎深?なぜそうなる?)
「悠舜は、鳳珠が春麗のことをそこまで好きではない、と思っていたのではないか?私は春麗が不幸になることは絶対に許さん!アイツと決闘だ!」
「え?ちょっと、黎深??」
一人合点して出て行こうとする黎深を悠舜が止めようとしたが、脚のことで初動が遅れた。
(しまった!)
と思ったと同時に、ドサっと何かが落ちた大きな音がした。